2010 Fiscal Year Annual Research Report
イオン加速器連結型トンネル顕微鏡を用いた照射下原子動的挙動解明に関する研究
Project/Area Number |
22686088
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沖田 泰良 東京大学, 人工物工学研究センター, 准教授 (50401146)
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Keywords | 走査型トンネル顕微鏡 / 表面科学 / 非平衡物理 / ナノテクノロジー / 照射損傷 / 原子力材料 |
Research Abstract |
本研究では、世界でも数台しか存在しないイオン加速器連結型走査トンネル顕微鏡を用いて、高エネルギー粒子入射下における結晶材料の表面はじき出し原子をオングストロームオーダーの高い空間分解能で観察する。これによって、従来の電子顕微鏡では不可能であった照射欠陥の原子レベルにおける定量化を行い、それらの形成過程・集合過程を実験的に評価する極めて革新的な研究を行う。この結果に基づき、材料挙動予測手法確立と耐照射性を有する新材料開発に資することを目的とする。 平成22年度は、Si(111)N型半導体7×7再構成面を用いて、走査トンネル顕微鏡の観察条件を最適化し、原子レベルの高空間分解能で表面欠陥を検出することに成功した。また、10~50keVのArイオン照射によってはじき出され表面に吸着した原子、及び空孔の定量化に成功した。照射材に対して、等温焼鈍試験を行い、融点の約1/2においても表面欠陥が殆ど回復しないことを解明した。更に、液体窒素温度まで下げ、かつ熱電対と放射温度計を併用することで温度制御をより高精度なものとした。そのもとで、液体窒素温度で照射及び観察を行い、はじき出し損傷素過程の定量評価を行った。 更に、照射チャンバーの真空度を一桁程度高めることに成功し、不純物吸着を極力抑えた観察を行うように改良した。加速器に関しては、低フラックスで安定したビームを作製することに成功し、単独入射イオンによる欠陥形成を定量評価することに成功した。この結果、入射イオン数に対して欠陥は多数、広範囲にわたって観察され、欠陥形成過程には入射イオンとの直接衝突以外の過程が存在することが明らかとなった。この過程は、これまでのはじき出し損傷評価には取り入れられておらず、今後計算科学的手法との関連に置いて、詳細な検討を行っていく必要がある重要な知見である。
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Research Products
(11 results)