2011 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオミクスと遺伝学の融合によるクロマチンーDNA修復のクロストークの解明
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22687001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣田 耕志 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00342840)
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Keywords | SILAC / クロマチン / DNA / ヒストン修飾 / DT40 |
Research Abstract |
近年、DNA修復応答経路におけるタンパク質のユビキチン化の重要性が知られるようになってきた。しかし、ユビキチン化の標的タンパク質が不明なので、ユビキチン化修飾経路は未解明のままであった。この経路の全貌解明を目指して、申請者は遺伝学手法と次世代プロテオミクス手法SILACを組み合わせた方法で、ユビキチン化の標的タンパク質の網羅的同定を行った。23年度にDT40細胞用にSILACによる細胞標識方法開発、データベース開発を行い、実際にSILACを用いてタンパク質が同定できる事が確認できた。さらに、ユビキチン化修飾を誘導する酵素を欠損する細胞を作製した。RNF8, RNF168はこれまでにUBCI3と同一経路で働く事が信じられていたが、我々の研究でそれぞれのタンパク質が異なる標的を持ち、実際のユビキチン化経路は、修復すべきDNA損傷のタイプや導入される時期によって個別の働きをするという、これまでの概念よりもずっと複雑である事が浮かび上がってきた(Kobayashi et al and Hirota投稿中)。この研究で、ユビキチン化酵素に対応する基質タンパク質を同定する事の重要性が再確認された。さらにRNF4という、新規ユビキチン化酵素の変異体も作製、解析を行った。この変異体はゲノムの安定的維持に必須の働きをする事が明らかとなってきた(Hirota et al.投稿中)。これらのユビキチン化酵素の標的タンパク質の同定のために、ユビキチン化タンパク質を精製し、SILACで野生型とこれらの細胞とでの比較を行った。しかしユビキチン化の標的タンパク質の同定には至っていない。それは(1)SILACの感度の問題(2)ユビキチン化タンパク質精製法の問題(3)ユビキチン化ペプチドの解析精度の問題などの問題のためである。これらの問題を24年度には解決し、ユビキチン化シグナル経路の全貌解明を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA修復のためのユビキチン化シグナル経路のSILACによる全貌解明に向けて、SILACをDT40細胞で運用できるようにできた。さらに、ユビキチン化を誘導する酵素、RNF8, RNF168, RNF169, RNF4, RAD18, UBC13の酵素の遺伝子破壊細胞を樹立し、興味深い酵素ごとの役割分担を見つけている(Kobayashi et al. and Hirota投稿中、Hirota et al. 投稿準備中)。一方樹立したSILACの感度は思ったほど高くなく、ユビキチン化される基質タンパク質が同定できずにいる。来年度には、この問題を解決して、RNF8, RNF4, UBC13の基質タンパク質の同定を目指す。さらに、上記の投稿中論文の受理を勝ち取る。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立したSILACで実際にユビキチン化される基質タンパク質が同定できない問題の対応策は以下のようである。 (1)ユビキチン化タンパク質の精製方法として、これまでにHisタグ融合ユビキチンの過剰発現-Hisカラム精製の方法を用いてきたが、ユビキチンを認識する抗体カラムを試す。(2)ユビキチン化タンパク質を精製分析する事自体をあきらめて、ユビキチン化シグナルに応答して、クロマチンに動員されるタンパク質を解析するなどして、ユビキチン化シグナルによるタンパク動態制御の網羅的解析を目指す。(3)首都大学東京(化学科)礒辺俊明教授、田岡万悟助教と共同研究をする事に成功した。彼らとともに、SILACを日本で立ち上げる。解析ごとにスイスへ行くこれまでのやり方では、正確にアッセイ系を立ち上げる事自体が無理。(廣田は礒辺俊明教授引退後の後任教授として24年度から首都大学東京教授となる)
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Research Products
(10 results)