2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22687018
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
重信 秀治 基礎生物学研究所, 生物機能解析センター, 特任准教授 (30399555)
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Keywords | 共生 / アブラムシ / トランスクリプトーム / 次世代シークエンサー |
Research Abstract |
「共生」は生物が新規機能を獲得する上で重要な役割を果たしているが、その新規性創出の遺伝子基盤はほとんどわかっていない。本研究では「共生による新規性創出は、異種間相互作用による遺伝子ネットワークの進化の結果である」という仮説を提唱し、昆虫=微生物の共生系、特にアブラムシとその細胞内共生細菌Buchneraの絶対共生系をモデルに用いて検証する。進化発生学の理論に立脚し、新規性創出のキーとなる転写因子・シグナル分子及びそれら標的遺伝子を同定することが目的である。 すでにトランスクリプトーム解析により共生器官で多数のアブラムシ特異的遺伝子、新規の分泌タンパク質が高発現していることを確認していた。今年度これら新規分泌タンパク質10種類以上のmRNA発現パターンをin situ hybridizationで調べた。その結果、すべての分泌タンパク質が同一の時空間摘発現パターンを示すことが明らかになった。つまり、胚発生におけるstage7と呼ばれるcellular blastodermに相当する時期--興味深いことにこの時期に共生細菌が母から胚に感染する-に共生器官原基の予定核の近傍で発現を開始し、以降、共生器官でのみ特異的に高レベルで発現する。さらに、分子進化的解析を行ったところ、これらの新規分泌タンパク質はお互い一時配列はあまり似ていないが、システイン残基が多い点等似た特徴を共有することがわかった。この分子は、宿主から分泌され共生細菌へターゲッティングされると予想しており、来年度以降検証する。 偶然にも、システインリッチな分泌タンパク質がマメ科植物=根粒菌の共生に重要な役割を果たしていることが、本年度報告され(Van de Velde 2010, Science)、彼らとの交流も開始したところである。
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