2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22687018
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
重信 秀治 基礎生物学研究所, 生物機能解析センター, 特任准教授 (30399555)
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Keywords | 共生 / アブラムシ / トランスクリプトーム / 次世代シークエンサー |
Research Abstract |
「共生」は生物が新規機能を獲得する上で重要な役割を果たしているが、その新規性創出の遺伝子基盤はほとんどわかっていない。本研究では「共生による新規性創出は、異種間相互作用による遺伝子ネットワークの進化の結果である」という仮説を提唱し、昆虫=微生物の共生系、特にアブラムシとその細胞内共生細菌 Buchnera の絶対共生系をモデルに用いて検証する。進化発生学の理論に立脚し、新規性創出のキーとなる転写因子・シグナル分子及びそれら標的遺伝子を同定することが目的である。 平成23年度は、「共生器官に発現するアブラムシ特異的分泌タンパク質の機能解析」において大きな進展があった。 すでにトランスクリプトーム解析により共生器官で多数のアブラムシ特異的遺伝子、新規の分泌タンパク質が高発現していること、10以上の遺伝子のmRNA発現パターンをin situ hybridization で検討済みであった。H23年度にはこれらを追試、データ・整理を行い、これらの新規分泌タンパク質をBCRと命名し、論文としてまとめた(論文投稿中)。 さらに、BCR遺伝子のタンパク質レベルの機能解析に向けて、HisタグをつけたBCRリコンビナントタンパク質の大腸菌や酵母での大量発現系を試みた。多数のジスルフィド結合をもつためか、標準的な大腸菌の大量発現系はうまくいかなかったが、プロトコールを工夫することにより1つのBCRでは発現と精製に成功した。また、Pichia酵母の系ではほとんどのBCRで大量発現が可能となりそうな予備実験結果が得られており、来年度の研究の進展が期待できる。 BCRは根粒菌のNCRとの構造的・機能的類似性を見いだし、植物研究者との共同研究も開始した。 またアブラムシ=Buchnera の共生に関する総説論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの小課題のうち「共生器官に発現するアブラムシ特異的分泌タンパク質の機能解析」については、計画以上に進展している一方で「転写因子D11の制御する遺伝子ネットワークの解明」が実験技術上の困難がありやや遅れているので、総合的に判断して「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2つの小課題のうち「共生器官に発現するアブラムシ特異的分泌タンパク質の機能解析」については、大量発現系の構築に成功したので精製タンパク質を利用した in vitro アッセイや抗体を利用した研究を進める。 「転写因子D11の制御する遺伝子ネットワークの解明」は次世代シークエンサー実験の技術上の困難があり計画よりやや遅れていたが、申請者は他の研究課題でChIP-seqのノウハウを共同研究者から得る機会を得たので、その情報をとりいれて実験系を再構築する。
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Research Products
(5 results)