2011 Fiscal Year Annual Research Report
性フェロモン受容体遺伝子のフェロモン受容細胞特異的発現を決定する分子機構の解明
Project/Area Number |
22688004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
櫻井 健志 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (20506761)
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Keywords | 昆虫 / 遺伝子 / 発現制御 / 性フェロモン受容体 / カイコガ |
Research Abstract |
本研究では、カイコガ(Bombyx mori)をモデルとして、性フェロモン受容体遺伝子の特異的発現を制御する分子間ネットワークを明らかにすることを目的とする。本年度は、in vivoプロモーターアッセイによるカイコガ性フェロモン受容体遺伝子BmOR1およびBmOR3の特異的発現に必要な最小プロモーター領域の決定を中心に研究を進めた。BmOR1については0.5kb, 1kb, 2kbの上流領域をプロモーターとしたGAL4系統を作出し、UAS-GFPと交配後、GFP発現パターンを解析した。なお、BmOR1、BmOR3の発現細胞は触角葉の大糸球体と呼ばれる構造の中のtoroid、cumulusと呼ばれる領域にそれぞれ選択的に軸索投射をすることが明らかになっている。簡便に解析を進めるために、本研究では、GFP発現細胞の触角葉への投射パターンを指標としてプロモーターの活性を推定した。BmOR1はプロモーターとして利用した領域に関わらず、いずれの個体においてもtoroidへの投射が確認されたが、cumulusへの投射が検出された個体はいなかった。これらの結果から、0.5kb以内にフェロモン受容細胞での発現を活性化するシス配列が存在することが示唆された。なお原因は不明であるが、一部の個体では、toroidに加えて一般臭の受容細胞が投射する常糸球体への投射がみられた。BmOR3に関しては0.5kb, 1kb, 1.5kbの上流領域をプロモーターとしたGAL4系統を作出し、同様の解析を行ったが、いずれの系統においても触角葉におけるGFP発現は観察されなかったことから、BmOR3の発現にはさらに上流領域に含まれるシス配列が必要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度中に、in vivoプロモーターアッセイによる最少領域を決定し、遺伝子発現に必須なシス配列の同定へと研究を進める予定であったが、BmOR1については想定より短い領域中に、BmOR3については想定より長い領域中にシス配列が存在することが示唆されたため、当初の予定より多くの遺伝子組換えカイコガの作出が必要となったため、やや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな遺伝子組換えカイコガの作出と並行して、シス配列の同定を進めることで研究を推進する。特にBmOR1は必須領域の絞り込みが完全ではないものの、0.5kbまで領域の絞りこみはできているため、集中的に研究を進めることを考えている。また、研究期間中にキイロショウジョウバエの嗅覚受容体遺伝子の発現制御に関わる転写因子群が報告されたため、これらのカイコガ相同遺伝子を転写因子側の候補遺伝子として集中的に解析を行うことで研究を推進したいと考えている。
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