2011 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞壁ペクチン質多糖のホウ酸による架橋に必要な分子の同定
Project/Area Number |
22688005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三輪 京子 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (50570587)
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Keywords | シロイヌナズナ / ホウ素 / 変異株 / ペクチン |
Research Abstract |
ホウ素は植物の必須元素であり、その欠乏は農業生産に重大な影響を与える。ホウ素の役割は植物細胞壁のペクチン質多糖ラムノガラクツロナンンII(RG-II)間を架橋することであるが、その架橋反応の分子機構は明らかにされていない。そこで、本研究では「RG-IIのホウ酸による架橋に必要な分子の同定」を目指した。 RG-IIのホウ酸による架橋に関わる分子を単離するため、分子遺伝学手法による高ホウ素要求性変異株の単離を進めた。低濃度でのホウ酸存在下においてRG-IIとの架橋反応を促進する分子の存在を仮定すると、この分子の機能が低下した場合、通常の細胞内のホウ酸濃度ではRG-IIの架橋がうまく起きないと予想される。一方、過剰のホウ酸を加えた条件では反応基質が過剰となり、RG-IIの架橋が部分的には回復すると考えられる。つまり、機能欠損株は通常のホウ酸濃度条件では、野生型株と比較してホウ素欠乏症状を示し、ホウ素を過剰に添加した条件ではその生育が回復するという、ホウ素依存的な生育を示すことが期待される。そこで、塩基置換を誘発する変異誘起剤で処理を行ったシロイヌナズナCol-0の種子を準備し、ホウ酸通常条件の培地で生育させ、地上部ロゼット葉の展開または根の伸長を指標に生育抑制を示す株を選抜した。高濃度のホウ酸を含む培地へ移植後、生育が回復した株を「高ホウ素要求性変異株」として選抜した。その結果、ロゼット葉の展開を指標として1万4000株のM2から46株、根の伸長を指標として1万8000株のM2から15株の候補株を得られた。遺伝子マッピングの結果、既報の遺伝子の変異に加え、報告のない染色体1番と2番に原因遺伝子の存在が明らかになり、新規変異株の獲得が確認された。 加えて、昨年度までに作出した低ホウ酸馴化シロイヌナズナ培養細胞が低いRG-II架橋率を示すことを見出し、網羅的な遺伝子発現解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「高ホウ素要求性シロイヌナズナ変異株」の探索を行ったところ、実際に独立な候補株が複数得られた。数株については原因遺伝子が座上する染色体部位の同定まで進んでおり、原因遺伝子の同定が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
単離された「高ホウ素要求性変異株」の原因遺伝子の同定を進めていく。地上部ロゼット葉を指標としたスクリーニングでは46株の候補株が得られているが、生育の培地ホウ酸濃度に対する依存性の強いもの、生育抑制の程度が顕著なものを優先として解析対象とする。
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Research Products
(9 results)