2011 Fiscal Year Annual Research Report
光エネルギー駆動型の物質生産能を有する複合微生物系の創成
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22688006
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
春田 伸 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50359642)
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Keywords | 微生物 / 生態学 / バイオテクノロジー |
Research Abstract |
陸上温泉の約55℃の温泉流水中に発達する微生物集塊から、シアノバクテリア(9株)、好気従属栄養細歯(81株)、緑色糸状性光合成細菌(3株)、発酵性細菌(2株)を分離した。様々な組み合わせで共培養効果を評価したところ、好気従属栄養細菌のなかにシアノバクテリアと光独立栄養条件で安定に共存し、さらにシアノバクテリアに細胞凝集を引き起こす株を見いだした。この種間相互作用は、環境中で見られるようなシアノバクテリアを主体とした微生物集塊の形成機構の一つと考えられる。 温泉流水中から採取した微生物集塊(微生物マット)を、マット状の構造を維持したまま光照射条件で培養すると、シアノバクテリアによる酸素ガスの発生とともに、水素およびメタンの生成が見られた。ただし、培養条件の最適化を図ったものの、ガス発生は約1ヶ月しか継続できなかった。一方、撹拌混合条件でも試行を繰り返したところ、光照射条件で二酸化炭素を供給すると、酸素、水素、メタンがガス成分として生成する系を構築することができた。この系は、半年以上にわたって安定なガス発生を維持することができている。また光照射条件や二酸化炭素の供給量を変化させながら機能集積を続けることで、水素ガスの発生を抑制し、メタンガスの発生に集約できるようになった。培養液の菌相解析の結果、複数のメタン生成アーキアが共存していることを確認している。光合成による酸素発生型一次生産槽とその有機物を変換する嫌気的な物質変換槽とにコンパートメント化することなく、ひとつの槽内でこの両者の活性を同時に達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったシアノバクテリアを軸とした複合微生物系を創成し、光エネルギーによって駆動するバイオガス生産システムの構築に成功している。同時に、対象とする微生物生態系から95株の細菌を分離培養することで、本年度の課題であった複合系を構成する細菌同士の種間相互作用の解析を進めることができた。その結果、他菌との混合によってシアノバクテリアの挙動が変化することを発見しており、複合系の制御に向けた基礎的知見を集積できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築できた複合微生物系は、物質変換機能は安定しているものの、一次生産能を増強できる余地が残っている。それには、最適化な培養条件を検討するほかに、物質・エネルギーの変換経路を明らかにして、補強すべき構成種を同定する。加えて、複数のシアノバクテリアの複合利用を試行し、一次生産経路の拡充を図るとともに、微生物生態系において複数種が共存する多様性維持の機構に関して理解を深める。
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Research Products
(11 results)