2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22688010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石丸 喜朗 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任助教 (10451840)
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Keywords | 味覚 / 脳・神経 / 解剖学 / 酸味受容体 / トランスジェニックマウス / シナプストレーサー |
Research Abstract |
本研究は、末梢の味蕾において別々の細胞によって感知される異なる基本味が、どのように中枢へ伝えられるかという「味覚コーディング機構」の解明を目指している。前年度までに、酸味受容細胞特異的に経シナプストレーサー分子コムギ胚芽レクチン(WGA)を発現するトランスジェニックマウス(Pkd113-WGAマウス)を作出した。詳細な解析の結果、舌後方の有郭・葉状乳頭の酸味受容細胞から、味神経の細胞体が存在する顔面神経膝神経節(GG)と迷走神経節状神経節・舌咽神経下神経節(NPG)を経由して、延髄孤束核に至る酸味情報伝達神経回路の可視化に成功した(Yamamoto et al.,J.Neurochm.,2011)。今年度は、酸味と甘・うま味や苦味の情報伝達神経回路の関係を解明することを目的として、感覚性脳神経節(GGとNPG)におけるWGAシグナルを、甘・うま味や苦味情報伝達神経回路を可視化したマウス(T1r3-WGAマウスとT2r5-WGAマウス)と比較解析した。NPGに関しては、T1r3-WGAマウスではWGAシグナルが5-HT3B陽性細胞の約8割で検出されたのに対して、T2r5-WGAマウスとPkd113-WGAマウスでは、WGAシグナルは5-HT3B陽性細胞とほとんど重ならなかった。以上のように、分子マーカーを用いて、嗜好する甘・うま味と忌避する苦味や酸味を伝える味覚伝導路が分離している可能性が示唆された。 また、味細胞と味神経間連絡の形成・維持を制御する分子群を同定する端緒として、Pkd113-WGAマウス作出の際に用いたPkd113遺伝子の5'上流約10kb領域を転写調節領域として利用して、酸味受容細胞をGFP標識するPkd113-GFPマウスの作出に成功した。現在、甘・苦・うま味受容細胞をGFP標識するP1cb2-GFPマウスと共に、GFP蛍光を指標として集めた味細胞から、遺伝子発現プロファイル解析に必要な全RNA量が取得可能か検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸味受容細胞特異的に経シナプストレーサーWGAを発現するPkd113-WGAマウスの作出に成功し、舌後方の有郭/葉状乳頭の酸味受容細胞から、味神経の細胞体が存在する顔面神経膝神経節(GG)と迷走神経節状神経節・舌咽神経下神経節(NPG)を経由して、延髄孤束核に至る酸味情報伝達神経回路を解明した(論文発表済、Yamamoto et al.,J-Neurochem.,2011)。また、分子マーカーを用いて、感覚性脳神経節(GGとNPG)における甘・うま味(T1r3-WGAマウス)、苦味(T2r5-WGAマウス)、酸味の情報伝達神経回路を比較した(学会発表済)。さらに、酸味受容細胞を特異的にGFP標識するPkd113-GFPマウスの作出にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
異なる基本味間の情報伝達神経回路をより詳細に比較解析する。味細胞と味神経間連絡の形成・維持を制御する分子群の同定に関しては、Pkd113-GFPマウスやP1cb2-GFPマウスから遺伝子発現プロファイル解析に必要な数の味細胞を集めることが困難な場合は、転写因子Pou2f3の欠損によって甘味・うま味・苦味受容細胞が酸味受容細胞に置換されたノックアウトマウス(Ohmoto et al.,Nature Neurosci.,2011)を使用して、野生型マウスと比較することで、味細胞種特異的発現分子の同定を行う予定である。
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Research Products
(16 results)