2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本の海岸クロマツ林における外生菌根菌群集の解明と優占種の機能的,遺伝的評価
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22688011
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松田 陽介 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (30324552)
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Keywords | 外生菌根菌 / クロマツ / 海岸林 / Cenococcum / internal transcribed spacer |
Research Abstract |
クロマツ自然分布の北限と南限における海岸クロマツ林の菌根菌群集を明らかにするため,青森県と鹿児島県の海岸クロマツ林分における菌根調査を行った.調査地は海岸クロマツ林2か所,青森県つるが市の屏風山海岸林と鹿児島県日置市の吹上浜海岸林に設置した.2010年7月か8月に両調査地の約5haの範囲から土壌パイプを用いてクロマツ樹冠下の表層土壌(直径3cm,長さ30cm)を採取した.土壌は各クロマツから1サンプル,最低数m以上離れた個体から合計56サンプル採取した.全サンプルからクロマツ根系を取り出してから顕微鏡観察に用いた.クロマツ根端は外観から菌根かどうかを判別し,C.geophilum菌根は光学顕微鏡観察にもとづき同定した.その後,C.geophilum菌根を除く菌根を対象に菌由来の核rDNA ITS領域のダイレクトシークエンス解析を行ない,系統タイプに識別した.土壌サンプルにおける各系統タイプもしくはC.geophilumの有無にもとづき出現頻度を,土壌サンプルに占める検出菌根数を出現割合として算出するとともに,多様性指数を評価した.青森県,鹿児島県の調査地から採取したクロマツ根端のそれぞれ100%(n=5209),99.9%(n=10409)が菌根化していた.菌根の色は白系,茶系,黒系に大別され,黒系菌根は星状のNet Synenchyma様の表面構造を有することからC.geophilumによる定着と同定された.この菌根は両調査地から検出され,青森県と鹿児島県の土壌サンプルにおける出現頻度はそれぞれ42.6%と100%であった.C.geophilum菌根の出現割合は,青森県で7.6%,鹿児島県で57.9%であった.クロマツ菌根からゲノム抽出したサンプルのうち,青森県で214サンプル,鹿児島県で223サンプルが菌由来のITS領域の単一バンドの増幅に成功した.以上より,C.geophilumはクロマツ自然分布の北限,南限の海岸クロマツ林に優占するものと考えられた.現在シークエンス解析を遂行中である.
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