2011 Fiscal Year Annual Research Report
接着剤の浸透分布を基盤とした合理的な木材接着体の設計指針
Project/Area Number |
22688013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 成人 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (80313071)
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Keywords | 木材接着 / アンカー効果 / 投錨効果 / 計算機シミュレーション / 破壊 / 機械的接着 / 共焦点型レーザー顕微鏡 / 有限要素法 |
Research Abstract |
ある材料の特性について一つの法則式があったとして、新たな傾向が実験で見いだされたときは式へ修正や備考、例外が加えられる。結果として、式が複雑になるか、一般性を失って、適用が難しくなる(例えば、ガラス転移温度を計算するFox式に対して、多数ある拡張式など)。 これが特に顕著なものの一つが木材接着である。木材自体が複雑系の上に、その接着特性へ至るまで、非常に多くの因子が関与する。従って、なんらかの法則性を見いだすのは困難である。 この現況を打破する一つの手法として、基礎的な原理から複雑な機構へ順に組み上げていく演繹的なシミュレーションの導入を試みている。これは、最小限の規則で構成した計算格子を大規模に連結して、接着体のモデルを計算機の上で構築し、たとえば破壊といった現象を仮想的に観察する。この際、前述したように、既存なり新規なりの実験結果に沿うようなモデルへ絞り込んでいき、組み合わせ爆発へ至らないよう制御する(この点は帰納的でもある)。 最も単純なモデルを用いて木材接着の破壊をシミュレートした。二次元平面に展開した格子一つを四辺形として、その原点から四つの辺にそれぞれ粘弾性モデルの力線を繋いでいる。また、格子の変数一つ一つに、設定値よりわずかに異なるゆらぎを組み込んだ。力線の伸びが規定値を超えたときを格子辺の破壊と定義し、この破壊が連続したら裂け目と見なせる。これが広がるにつれて先端のひずみも徐々に大きくなっていき、加速度的に裂け目が成長する。やがて、最も大きな裂け目が、対象の接着破断へ至る。この仮定を基に、格子数1000x1000個とした二次元モデルでシミュレートしたところ、凝集破壊を再現できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は顕微鏡で観察した木材-接着剤の分布像から、計算機シミュレーションを用いて破壊形態の予測に取り組んだ。シミュレーションの係数は膨大でかつ微妙な変動をもたらすので、その値の取り決めには膨大な計算量(と時間)が必要である。そのために研究計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
11.で研究計画に遅れが生じていると報告したが、値の取り決めにめどが付いたので、この先はそれ程時間はかからない。計画通りのスケジュールに戻すことは可能と考える。なお、予算申請した以上に計算機資源(実際はパソコン)をより多く導入する必要がある。
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