2011 Fiscal Year Annual Research Report
海洋環境中におけるDNA/RNA両ウイルスの宿主争奪戦に関する研究
Project/Area Number |
22688016
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
外丸 裕司 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所・環境保全研究センター, 主任研究員 (10416042)
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Keywords | 珪藻 / RNAウイルス / DNAウイルス / 生態 / 微細藻類 |
Research Abstract |
近年、海洋を舞台としたウイルス学の著しい進歩が注目されている。本研究では、DNA/RNA両タイプのウイルスの共通宿主に対する感染・複製・優占化戦略を、珪藻とそれに感染する2種のウイルス(DNA/RNAウイルス)を材料としで比較・解明することを目的とした。 珪藻とウイルスの挙動に関し、広島湾で定期モニタリングを行った。またDNA/RNAウイルス種を特定するための分子プローブの特異性を確認した。各プローブとも宿主ゲノムには反応せず、ターゲットウイルスのみを特異的に検出可能であることが明らかとなった。その系を用いて解析した結果、2010年に分離されたウイルスはいずれのプローブにも反応しなかった。この現象は再現性が高いことから、当該年に発生したウイルスはいずれの種にも該当しない新種である可能性が推察された。昨年度分離したキートセロス・テヌイシマス計26株を用い、15℃条件下におけるそれらのDNAIRNAウイルスに対する感受性試験を実施した。その結果、株により両ウイルスに対する感受性に差があることが明らかとなった。25℃条件下と比較した場合、15℃条件の方がウイルス感染の影響がより明確になる組合せがあることが確認された。またDNAウイルスに対するペプチド抗体の作製ならびに、RNAウイルス用抗体の精製を行った。 昨年度分離に成功した新奇ウイルスSSO8-CO3Vについて、ゲノム配列の解読に成功した。ゲノム上のRNA依存性RNAポリメラーゼ領域を対象とした系統解析では、本ウイルスが珪藻感染性一本鎖RNAウイルス属のメンバーであることが明らかになった。さらに本課題遂行中、これまで明らかにされていなかった羽状目珪藻に感染するウイルスの存在を、世界で初めて証明することに成功した。 この成果はインパクトファクター6.153の微生物生態学専門誌ISME Journalに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現場調査を計画的に進めるとともに、出現したウイルスの分離保存に順次成功している。また、ウイルス種判別用の分子プローブの作製にも成功し、アッセイもすでに行った。環境要因の変動が及ぼす、宿主・ウイルスの関係については、温度条件の変化により両者の感染・被感染の関係が変化する場合があることを抽出した。さらに、ウイルスの特異的検出を目的とした抗体の作製においても、予定通りに作業を進めているといえる。この過程で、DNAウイルスゲノム上の殻タンパク質コード領域を推定することに成功した。以上の理由から、本研究は(2)おおむね順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
現場調査については、今後も年間を通して定期的に実施し、分離ウイルス株を蓄積していく。ウイルス種判別用の分子プローブに反応しなかったウイルス株については、ゲノム情報を明らかにすることによりプローブの再構築を行う。環境要因が与える宿主・ウイルスシステムへの影響評価については温度条件をさらに振りつつ、ウイルスの分子生物学的検出技術も併用することで、精度の高い実験を進めていく予定である。また、作製した抗体の精製度を高めていくことで、様々な実験に使用可能な抗体を準備する。これにより、宿主へのウイルス初期感染ルートの端緒が解明されるものと期待される。以上の実験を総合し、現場海洋環境中におけるDNA/RNAウイルスの宿主感染戦略について考察する。
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[Journal Article] First evidence for the existence of pennate diatom viruses2012
Author(s)
Tomaru, Y., Toyoda, K., Kimura, K., Hata, N., Yoshida, M., Nagasaki K
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Journal Title
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Isolation and characterization of a single-stranded DNA virus infecting the marine planktonic diatom Chaetoceros sp.(strain TG07-C28)2012
Author(s)
Toyoda, K., Kimura, K., Hata, N., Nakayama, N., Nagasaki, K., Tomaru, Y.
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Journal Title
Plankton Benthos Res.
Volume: Vol.7
Pages: 20-28
Peer Reviewed
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