2012 Fiscal Year Annual Research Report
海洋環境中におけるDNA/RNA両ウイルスの宿主争奪戦に関する研究
Project/Area Number |
22688016
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
外丸 裕司 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所 環境保全研究センター, 主任研究員 (10416042)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 珪藻 / DNAウイルス / RNAウイルス / 現場動態 / 抗体 / ウイルス種判別 |
Research Abstract |
本研究では、DNA/RNA両タイプのウイルスの共通宿主に対する感染・複製・優占化戦略を、珪藻とそれに感染する2種のウイルスを材料として比較・解明することを目的とした。 キートセロス・テヌイシマスに感染するRNAウイルスならびにDNAウイルスをターゲットとしたプローブを用いて、2010年に分離したウイルスの種判別を行った。その結果、いずれのプローブもウイルスゲノムに反応を示さなかった。プローブを作製するために使用したウイルスが5年以上前に分離したものである点と分離場所が異なることから、今回アッセイしたウイルスゲノムの塩基配列とプローブの配列の相同性が低いことが起因していると推察された。そのため2010年に分離したウイルス全ゲノムの塩基配列解析を実施した。その結果、2010年に分離したいずれの核酸タイプのウイルスも、過去に分離したウイルスと種レベルで異なる可能性が推察された。ウイルス検出用の分子プローブは、DNA/RNAとも新たに作製し直し、改めてウイルス種判別を行ったところ、2010年に出現したウイルスは、宿主ブルームの前半にRNAウイルスが優占し、続いて後半にDNAウイルスが優占していた。 RNAウイルスは宿主株2-10に対して、15℃では一週間以内に培養の崩壊が確認されたが、25℃では完全崩壊までに2週間以上を要した。また、宿主株2-6には、いずれの温度でもRNAウイルスの複製を許さないことがノザン解析により明らかとなった。今後、より多くの条件や宿主-ウイルスの組み合わせで解析を行い、理解を深めることが必要である。 精製粒子を基にしたRNAウイルス用の抗体の特異性を高めるため、各種精製試験を行ったが、最終的に高度な種特異性は期待できないと判断された。そのため次年度にRNAウイルス用のペプチド抗体を作りなおす必要がある。一方、DNAウイルス用の抗体は高い特異性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウイルスの種特異的分子プローブの作製に成功したことにより、目標としていたDNA/RNAウイルスの動態を宿主の挙動と共に観測可能になりつつある。また、生理学実験も地道ではあるが、着実に成果を蓄積することに成功している。ウイルス検出用抗体の作製も試行錯誤によって前進しており、一定の成果を上げられていると言える。さらに今年度は、珪藻ウイルスに関する研究の一部をホームページ上に公開し、研究成果の普及に努めた。以上の理由から、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
環境要因が与える珪藻-ウイルス関係についてさらにデータ蓄積を行い、珪藻DNA/RNAウイルスと共通宿主珪藻個体群の関係を総合的に考察する。また、現象を裏付けるための分子機構を明らかにすることを目的とし、ウイルスの珪藻への感染機構について抗体などを利用した実験を引き続き行う。
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