2011 Fiscal Year Annual Research Report
精子形成に関わるオートファジー(自食作用)の新たな生理機能の解析
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22688022
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
塚本 智史 独立行政法人放射線医学総合研究所, 研究基盤センター, 技術員 (80510693)
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Keywords | オートファジー / 精巣 / ノックアウトマウス / 不妊 |
Research Abstract |
一般的に成熟精子は細胞質に乏しいユニークな形態であるが、これは精子形成の最終段階(精子完成あるいは変態と呼ばれる過程)で、余分な細胞質を脱ぎ捨てるためである。本研究では、細胞質で起こる大規模な分解系であるオートファジーが精子細胞質の除去に果たす生理学的意義を明らかにすることを目的とした。 これまでの本研究で、精子完成過程でオートファジーが誘導すること、この時期のオートファジーを欠損したノックアウトマウスは加齢依存的に不妊傾向を示すこと、このノックアウトマウスを使った解析から精子完成過程で異常構造体が蓄積すること、この構造体は加齢依存的に増加すること、結果的に精子成熟過程にも異常をきたし精子運動性が低下することを明らかにした。これらの結果は、オートファジーが精子完成過程で重要な役割を果たすことを示唆しており、生物学的にも意義のある成果であると考えている。しかしながら、なぜオートファジーが働かないと精子完成過程に異常をきたすのか、その根本的な原因解明には至っていない。 そこで、平成23年度はタンパク質の二次元電気泳動解析を中心に、オートファジーの欠損が精巣機能に及ぼす影響について多面的に検討した。その結果、オートファジーの欠損が精子形成(精原細胞~精子細胞までの分化)過程に及ぼす影響は小さいということが分かった。オートファジーを欠損した精巣のサイズは同時期の精巣よりも小さいことを考えると予想外の結果であったが、アポトーシスによる細胞死も観察できなかったことから、オートファジーは精子形成そのものには影響せず、精子完成過程で重要な役割を担っていることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究期間内に本研究の目的を達成するための当初の研究計画のほぼすべてを実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初の計画通り実施しておりここまでは順調である。しかし、それぞれの解析結果の解釈にはさらなる研究が必要である。特に今年度実施した研究では、その材料として精巣の全タンパク質を使ったために、実際に生じている軽微な変化を見逃している可能性や二次的な影響を評価している可能性がある。そこで次年度は精子細胞だけを単離することで、オートファジーが精子細胞に与える影響をより正確に解析する。
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Research Products
(1 results)