2011 Fiscal Year Annual Research Report
犬・猫の造血系腫瘍の分子病態に基づく予後評価法の確立とテーラーメイド療法の開発
Project/Area Number |
22688026
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤野 泰人 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (70401180)
|
Keywords | リンパ系腫瘍 / 肥満細胞腫 / 微小残存病変 / 分子標的療法 / 予後解析 |
Research Abstract |
本研究の目的の一つである「リンパ腫の分子病態に基づく微小残存病変(MRD)定量による治療効果判定・再発予測法の確立」に関する研究成果としては、犬のリンパ腫に対する多剤併用化学療法における個々の抗癌剤の客観的かつ詳細な効果判定法としてMRD測定が極めて有用であり、抗癌剤の種類によって効果に有意差が生じること示した。さらにMRDの経時的変化が症例の予後と相関することを明らかにした。すなわち既定の多剤併用化学療法終了後のMRDレベルは、その後のリンパ腫の寛解期間と負の相関性が認められた。本研究は犬のリンパ腫における治療効果判定と予後評価を分子生物学的手法を用いて客観的に実施可能とするものであり、さらなるデータ蓄積が必要ではあるが、世界的にも類をみない先駆的な成果である。今後は多角的な視点においてMRD測定の有用性を検討していく予定である。一方、猫のリンパ腫における新規遺伝子クローナリティ検査法を確立することに成功し、さらに既存の遺伝子検査と免疫組織化学検査の結果における一致性を検討し報告した。 また、本研究の目的の一つである「肥満細胞腫におけるTK遺伝子変異・リン酸化解析に基づく治療効果判定・予後予測法の確立」に関する研究成果としては、異なるc-kit塩基配列を有する犬の肥満細胞腫に対して様々なTK阻害剤による増殖抑制効果を解析し、c-kit塩基配列により効果を示す薬剤および薬用量が異なることを明らかにした。さらに、c-Kitタンパク以外の標的候補分子に対する様々なTK阻害剤の効果を解析し、Chk1、PDGFR、Hsp90などのTK関連タンパクが犬の肥満細胞腫において新規治療標的分子となり得ることを明らかにした。本研究成果は動物の肥満細胞腫に対する分子標的療法の有用性において重要なエビデンスとなると考えられ、さらに今後の新規分子標的療法の検討および確立において極めて有用な成果であると考えられる。今後はc-kitの変異、他のリン酸化関連遺伝子、腫瘍の病型などの多面的な因子が症例の予後に及ぼす影響についてもさらに検討していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンパ腫および肥満細胞腫の両疾患における研究は、ほぼ予定していた計画通りに成果を示すことができており、学会報告や国際学術雑誌への掲載も順調に遂行されている。しかし、当初の計画で予定していた研究費が減額配分されており、研究費が不足していることが問題点である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画が減額配分された研究費により遂行可能かどうかを再検討しなければならない。学術的および臨床的に有用な成果を示すためには、現在の研究推進状況を維持するべきであると考えられるが、細かい点においてさらなる研究経費の節約を実施していく予定である。しかし、それでも研究費が不足する場合には、研究規模の若干の縮小も検討しなければならない。
|
Research Products
(27 results)