2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22689001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有澤 美枝子 東北大学, 大学院・薬学研究科, 講師 (50302162)
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Keywords | 平衡反応 / ロジウム触媒 / ヘテロ元素捕捉剤 / 平衡制御 / 熱力学的安定性 / 切断再配列 / 単結合 |
Research Abstract |
ロジウム触媒が様々な単結合を容易に可逆的に切断することを見出した。今回、平衡を望みの物質生成にシフトする方法として、1)段階的に中間生成物を選択し、平衡系を出発物質から移動させながら目的物に到達する平衡制御、2)ヘテロ元素捕捉剤を用いる平衡制御を検討した。 1)これまでに、α-チオケトンやベンジルケトンに加えて、アルキルケトン(pKa24)及び複素環化合物(pKa27)のC-H結合をC-S結合に平衡的に変換することに成功した。本年度は、ジメチルジスルフィドを用いてベンゾチアゾールをチオ化する反応が、アセトフェノン、ベンジルケトン、アルキルケトンを添加し、対応するチオ化ケトンを経由することで進行することを明らかにした。これは、平衡相関をもとにして、入手容易な化合物から熱力学的に不利な反応を行えることを示した結果である。 2)平衡反応を望みの物質生成へシフトさせる方法としてヘテロ元素捕捉剤を用いる平衡制御法を検討した。本年度は、ロジウム触媒を用いると、酸フッ化物C-F、チオエステルC-Sに加えて、芳香族エステルC-O、アシルホスフィンスルフィドC-P結合間の全ての相互交換反応が進行することを明らかにした。反応はいずれも平衡反応である。基質を過剰に用いることなく、種々のヘテロ元素上へのアシル基転位反応を効率よく行う方法として、ヘテロ元素捕捉剤を添加し、より熱力学的に安定な化合物へ変換されることを利用して平衡を制御できることを示した。 一連の研究の過程で、ロジウム触媒が芳香族メチルエーテルO-CH_3結合を切断し、チオエステルC-S結合と交換することを示した。ポリメトキシベンゼンの反応は、極性の小さい化合物を与える位置で進行し、1,4-位にジメトキシベンゼン構造が残存する結果を得た。これは、ロジウム触媒が芳香環上の電子の偏りを認識し、極性の小さい化合物の生成を促進すると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、新しい平衡制御法として、1)ヘテロ元素捕捉剤を添加する平衡制御と2)段階的に中間生成物を選択し、平衡系を出発物質から移動させながら目的物へ到達する平衡制御法を開発できた。加えて、触媒的平衡相関に基づいて見出した複数の平衡反応を組合せて、熱力学的に不利とされる反応を行えることを確認した。なお、触媒的平衡相関を利用する反応開発については、ニトロアルカン等のC-H結合pKa指標とする反応、芳香族メチルエーテルの切断反応やイオウ単体を直接用いる反応開発において、当初の計画以上の成果を見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
触媒的平衡相関に基づいて見出した複数の平衡反応を組合せて、熱力学的に不利とされる反応を行えることを確認した。今後、この結果に平衡制御法を組合せて、効率よく複数の平衡系を移動させる方法を開発する。具体的には、生成物を系外へ移動させる工夫として、二層系反応の利用、フロー系の利用、酸化反応等の組合わせを検討して達成することを計画している。
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Research Products
(5 results)