2011 Fiscal Year Annual Research Report
PIPsとCa2+を軸にしたCaチャネル制御機構の解明
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22689006
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
森 誠之 福岡大学, 医学部, 准教授 (80342640)
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Keywords | 生理学一般 / 受容体・イオンチャネル / ホスホイノシチド / カルシウム / 蛍光エネルギー移動(FRET) / カルモジュリン / TRPチャネル / 平滑筋収縮 |
Research Abstract |
血管や消化管の収縮においてバソプレッシン等の収縮作動ホルモンによる収縮機構が知られている。この反応には細胞膜受容体を介したホスホリパーゼCの活性化が必要と考えられている。ホスホリパーゼCは細胞膜脂質ホスホイノシチド(PIP_2)を加水分解し、ジアシルグリセロール(DAG)を産生する。DAGはその受け手であるTRPCイオンチャネルを直接的に活性化し、細胞内ヘカルシウム流入を促すと考えられている。この系において、我々は、この受け手であるTRPCチャネルの制御機構について、特にPIP_2がどのように作用するか、電位作動性ホスホイノシチド分解酵素を用いて検討した。昨年度までにPIP_2の枯渇(減少)に伴い、DAGとは独立してTRPCチャネルが抑制されることを見出した。つまり、PIP_2はDAGの前駆体として存在するばかりではなく、その枯渇そのものがチャネルの不活性化シグナルとして機能することを明らかにした(自律的制御機構)。 本年度はTRPCチャネル活性に対し、収縮作動ホルモンを用いた生理的条件によるPIP_2の枯渇が及ぼす影響について、検討を行った。ムスカリン性受容体(MIR)を強制発現し検討した結果、TRPC電流の早い活性化と不活性化の両方が得られた。また、蛍光エネルギー移動(FRET)によるPIP_2とTRPC電流の同時測定を行い、PIP_2の変動量とTRPC電流のkineticsに相関性があることを見出した。昨年度の結果と本年度の結果をまとめ、論文に発表した(Y.Imai et al.,2012,The Journal of Physiology) また、PIP_2のFRETによる変動をより定量的に捉えることや、PIP_2結合部位に対する検討、PIP_2作用に関連した、細胞内カルシウムやカルモジュリン結合蛋白質カルモジュリンなどについて予備的な検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PIP_2の作用が非常に明確だったこともあり、予測より進んだとおもっている。更に、本年度論文に掲載された内容は、高い評価を受け、Journal of Physiologyのbiophysicalバーチャル特別号に取り上げられた。この号では、その他優れた論文が掲載されている中,我々の論文が、一番最初に掲載されている(http://jp.physoc.org/site/misc/virtualissueBioPhysTOC.xhtml)。しかしその一方で、研究計画にあった、細胞内カルシウムとの関連性の検討は、若干遅れている。理由として、考えていた以上にPIP_2による制御は複雑な現象が折り重なっているからと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
レシオメトリックFRETによるPIP_2の測定には定量性の観点から問題あるため、定量性を上げるには蛍光寿命測定が必要かと思われる。しかし、この研究では定量性ではなく、時間に伴った変動つまりkineticsを重視した研究を進めるべきと考えている。特にチャネルの活性化、不活性化とPIP_2の時間的な変動の関連性についてほとんど明らかではないので、FRETによるPIP_2とTRPC電流の同時測定を様々な条件(濃度、時間、受容体の発現量など)で行い、PIP_2とチャネルのkinetics相関を重視した研究を進めていく予定である。
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Research Products
(9 results)