2011 Fiscal Year Annual Research Report
シグナル伝達の活性強度を加減調節するレオスタット分子NLKの機能と制御の解明
Project/Area Number |
22689008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石谷 太 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (40448428)
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Keywords | NLK / Wntシグナル / Notchシグナル / シグナルレオスタット |
Research Abstract |
Nemo-like kinase (NLK)は種を越えて保存された蛋白質リン酸化酵素である。私たちはこれまでに、「NLKが"組織の形成と疾病の発症に関わるシグナル伝達経路群"の活性強度を調整する"レオスタット(加減抵抗器)分子"として機能すること」を明らかにしている。しかしながら、「(1)NLKによるシグナル活性制御の分子機構」、「(2)NLKによる活性制御の組織/個体における意義」、「(3)NLKの活性調節機構」、「(4)疾病発症とNLKの関係」については、十分には解析されていない。そこで、本研究ではこれらを詳細に解析し、NLKの機能と制御の分子/細胞/組織/個体レベルでの統合的理解を目指している。 本年度は、NLKによる転写因子Lef1のリン酸化が神経前駆細胞におけるWntシグナルの活性化に必須であることを見いだした。具体的には、神経前駆細胞がWnt分子を受容すると細胞内でNLKが活性化し、活性化したNLKがLef1をリン酸化し、Lef1のリン酸化の結果として、Lef1の活性抑制因子HDAC1がLef1から離れ、Lef1が活性化してWntシグナル標的遺伝子の発現を促進することを見いだした。また、モデル動物ゼブラフィッシュを用いた解析により、NLKによるLef1リン酸化が中脳の神経前駆細胞の増殖を促進し、正しいサイズの脳の形成に必須であることを見いだした。以上の成果はEMBO Journal誌において発表した。 また、NLKの活性化機構を解析し、NLKによる自身のThr-291のリン酸化がNLKの活性化に重要であることを見いだした(投稿準備中)。さらに、NLKの機能解析をゼブラフィッシュを用いて行い、NLKが腸の形成に必須であることを見いだした(投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NLKによるLef1リン酸化の意義を解明し、EMBO journalにおいて発表することができたため。また、「(1)NLKによる他のシグナル活性制御の分子機構」、「(2)NLKによる活性制御の組織/個体における意義」、「(3)NLKの活性調節機構」、「(4)疾病発症とNLKの関係」の解析も順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
シグナル活性を可視化したゼブラフィッシュと動物細胞株を用いたオリジナルの手法を用いて、「(1)NLKによる他のシグナル活性制御の分子機構」、「(2)NLKによる活性制御の組織/個体における意義」、「(3)NLKの活性調節機構」、「(4)疾病発症とNLKの関係」の解析を進める。
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