2012 Fiscal Year Annual Research Report
サービス利用者-援助者間関係の変革と協働のための技法研修プログラムの開発
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22689056
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 有紀 東京大学, 医学系研究科, 講師 (10292616)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2014-03-31
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Keywords | Intentional Peer Support / IPS / ピアサポート / 人間関係 / 主体性 / 精神保健 / グループプロセス / 医療・福祉 |
Research Abstract |
本研究の目的は、精神保健医療サービスの利用者が援助者に求める関係のあり方を抽出し、利用者中心のサービスに対する理論的理解と技法の習得を援助者に促すプログラムを開発することである。関係性に焦点を当てるにあたり、特に相互に学び合う関係を意識し実践する、米国のShery Meadにより開発されたIntentional Peer Support(IPS)が有用と考えた。 このため、本研究では、IPSを学ぶ研修会を実施し、研修会に参加した者にIPSを学んだことで生じた変化を問うことで、相互的な関係について考察しそれを学ぶような場を作ることにつなげる取り組みを行なっている。 平成24年度は、平成22年度、23年度に続き、国内でのIPS研修会の開催に協力すると共に、IPSの研修を受講した者やIPSに関心を有する者の学びやつながりの継続のための発信を行った。同時にIPSを学ぶワークブックの日本語版作成にも関わり続けている。 また、これまでのIPS研修会の参加者や、IPS研修受講者が中心となったIPS勉強会の参加者へのインタビューも引き続き実施している。インタビューは、グループインタビューと個別インタビューを継続して行なっている。IPS研修会で学んだことやその後の変化について話し合ったグループディスカッションを分析したところ、IPSを学んだことを通じて、参加者が自身の視野や価値観に気付き、他者、あるいは他者の価値観、世界観に対する見方に変化が生じ、自分と他者との関係に対する見方に変化が生じ、他者との関係に変化が生じていることが語られていた。今後は、このような気付きが生まれ共有され、相互の学びが生まれるプロセスとはどのようなものであるのか、そのような場はどのようにできるのかについても深めていく必要がある。その後のインタビューは現在分析とデータ収集を継続しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の計画通り、IPSの研修会を実施し、その参加者にインタビューを繰り返しているところであり、おおむね順調に進展していると判断できる。 IPSの研修会の開催に関しては、日本各地でIPS研修会を開催したいと希望する団体の運営や広報に協力している。ピアサポートの研修には、自分のことを語り人の話を傾聴するコミュニケーションスキルの研修や、従来のサービスの中でピアスタッフとして働くにあたっての知識やセルフケアを学ぶ研修などがあるが、IPS研修会は、他者との関係性に焦点を当て、関係を深めるための会話のあり方を考え、練習をする研修会である。このIPS研修会の報告や参加者の感想を発信するなどすることで、このような活動に関心のある層へ情報を届ける努力もしている。IPSの研修会は精神保健サービス利用者、精神保健サービス提供者も含めたあらゆる方を対象に開催されている。 インタビューに関しても、これまでグループインタビュー、個別インタビューを実施し、述べ約60名からIPSの研修会や勉強会から学んだことやその後の変化、IPSから学んだことをその後どのように実践しているかについての聞き取りを行なっており、データ収集と分析を行う質的研究を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は引き続きIPSの研修会を実施すると共に、これらの研修会を各地で企画したグループや研修を受講した人たちがその後IPSを継続して学びたいと考えた際にアクセスしやすいような資源に関する情報の発信を強めていきたい。 また、インタビュー調査を継続して実施し、分析を推進する。なお、今後のインタビューには、研修会で学んだことをどのようにその後実践しているかについて、自身で振り返りを行うことができるような項目についての意見聴取も含めることを計画中である。これらの項目を考える中で、IPSを学ぶことで変化するのはどのようなところなのか、実践していけると良いと思われるのはどのようなところなのかを深めることができると考えている。
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