2010 Fiscal Year Annual Research Report
複数右辺項をもつ連立一次方程式の高速・高精度求解法の開発と科学技術計算への応用
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22700003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
多田野 寛人 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 助教 (50507845)
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Keywords | Block Krylov部分空間反復法 / 連立一次方程式 / 複数右辺ベクトル |
Research Abstract |
本研究課題では,複数本の右辺ベクトルをもつ連立一次方程式を高速,かつ高精度に解く数値解法の開発を目的としている.このような連立一次方程式は,数値解析分野においては周回積分に基づく固有値解法,応用分野においては素粒子物理学の格子量子色力学(QCD)計算で現れ,連立一次方程式の高速解法は様々な分野で必要とされる基盤技術となっている. 複数右辺ベクトルをもつ連立一次方程式の反復解法として,Block Krylov部分空間反復法がある.同法はKrylov部分空間反復法と比較して,少ない反復回数で解が得られることがあるが,右辺ベクトル数が増加すると数値的不安定性により解が得られない場合も存在する.平成22年度はBlock積型Krylov部分空間反復法の収束性向上を目的として研究を行った.積型の解法では,加速多項式と呼ばれる多項式を用いて解法が安定化される.これまで研究代表者が開発したBlock BiCGGR法は加速多項式のパラメータ数が1つであったため,収束性に問題があった.今年度は2つのパラメータをもつ加速多項式で解法を構築し,高い収束性をもち,かつ高精度近似解を生成する解法を構築した.開発手法は,格子QCD計算で現れる連立一次方程式に対しても,高い収束性を示すことが確認された.また,従来手法であるBlock BiCGSTAB法の不安定性の原因を解析し,安定化を図った.反復過程で複数ベクトルの線形独立性が失われていくと,Block BiCGSTAB法は数値的に不安定な状況に陥る.反復毎に複数ベクトルを直交化することで,Block BiCGSTAB法の収束性・解の精度が大きく改善されることが明らかになった.直交化付きBlock BiCGSTAB法も,格子QCD計算に対して有効であることが確認された.
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Research Products
(4 results)