2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700011
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
長坂 耕作 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (70359909)
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Keywords | 数式処理 |
Research Abstract |
まず,昨年度の成果に基づき改良を続けている近似Groebner基底や整数上の近似GCDについて,国際研究集会のISSAC 2011とSNC 2011にて発表を行った(ISSAC2011は昨年度の成果報告書に含まれているため,本年度の成果には含めていない)。加えて,近似Groebner基底に関する招待講演を行ったことで得られたフィードバックから,後退誤差解析の研究が進んでいないものの非常に重要であることが判明した。萌芽的な方法について年度末に研究発表を行っており,今後の理論構築が望まれる段階である。発表後の年度末に計算機実験を繰り返し,既存の計算例について誤差解析は済ませたが,理論の詰めが残っている。 近似代数における誤差の概念の拡張として進めている整数上の近似GCDに関しては,SNC 2011の発表に基づいて発展させた論文を投稿中である。具体的な研究成果は,多倍長整数などにおける配列毎の誤差への対応を可能にしたことである。これにより,暗号系の安全性にも関係する整数の無平方分解への拡張も試みており,その中間報告を2011年12月の京都大学数理解析研究所の研究集会で行っている。 最後に,実践的な近似代数の機能を提供するパッケージやライブラリの開発は,既存のSNAPパッケージの改良を行うことよりも,汎用ライブラリの提供を優先した研究推進を行った。2011年7月と2011年9月に行った研究発表は,この試みの中間報告となっており,次年度以降の汎用ライブラリの設計と実装に先立つ調査や試験実装の結果について取り扱っている(7月の発表ではC++用に,9月の発表ではC用に試験実装している)。 なお,これら研究実績(ISSAC 2011,SNC 2011)に基づくプログラムは,Mathematica上に実装したものを,論文等に記載のURLからダウンロードすることで入手可能となっている。汎用ライブラリに関しては,試験実装のため公開は行っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細かい部分では,実施計画よりも進行している部分(整数誤差への対応と汎用ライブラリの実装)と,遅れている部分(近似Groebner基底)があるものの,基本的に各年度の研究実施計画に基づいて進行しており,全体としては,遅れていないが計画以上でもないと判断し,おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づき,次年度以降は汎用ライブラリの開発に力を入れる予定である。整数上の誤差については,実践的な問題を考慮した改良をこれまで通り続ける。近似Groebner基底については,実践上重要と考えられる後退誤差解析が不足しているため,SLRAを用いたアルゴリズムの改良ではなく,後退誤差解析に力を入れることで,実践的な汎用ライブラリの作成を可能としたい。
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