2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700011
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
長坂 耕作 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (70359909)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 数式処理 |
Research Abstract |
実践的な利用に不可欠と思われる近似Groebner基底については,2011年度のフィードバックから後退誤差解析の研究を行い,数学的に今後研究が必要とされる理論などについてまとめたものを,2012年7月,ISSAC2012においてポスター報告を行った。 近似代数における誤差の概念の拡張として進めている整数上の近似GCDについては,体上の最近特異行列問題に帰着することが出来ないため,今後の研究の礎として,関連する厳密な因数分解アルゴリズムであるBerlekampアルゴリズムについて近年のサーベイを行い,Groebner基底の利用による若干の改善を2012年7月,京都大学数理解析研究所の研究集会で報告した。 本年度より実践的な近似代数の機能を提供するライブラリの開発に取り組んでいるが,その過程において実施したMapleのSNAPパッケージの調査で,使われている近似GCDアルゴリズムの正当性と実際の実装に乖離があることを発見している。この実装はもっとも幅広く使われているものであり影響も多い。これを改善するアルゴリズム(ExQRGCD)を導き,その速報を,2012年12月,京都大学数理解析研究所の研究集会で報告している。 ライブラリの実装については,様々なデータ構造や実装形式において実験を繰り返し行った。その結果に基づき,基本的なデータ構造を確定させ,2013年3月よりウェブで公開を行っているが,APIの基本方針や基本データ構造のみとなっており,研究実施計画に基づき,多くの部分は最終年度における実装を待っている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
整数誤差への対応については,理論的な再構築を終えており,汎用ライブラリへの効果的な実装が残っているだけである。近似Groebner基底についても,理論的な整理を含み,一定の理論的な結果を計算可能と出来ており,同様に効果的な実装が残っているだけである。よって,基本的に各年度の研究実施計画に基づいて進行しており,全体としては,遅れていないが,特に汎用ライブラリの実装の進捗が計画以上でもないと判断し,おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づき,次年度の研究最終年度は汎用ライブラリの開発に最大限集中する予定である。その他,昨年度に発見し修正した近似GCD理論,整数上の誤差の更なる改良,近似Groebner基底の後退誤差解析などについても,実践的な汎用ライブラリの作成上,必要な部分については,それらも積極的に取り組んでいきたい。
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