2012 Fiscal Year Annual Research Report
SINRモデルを用いた実用的アルゴリズムの設計と可解性の解明
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22700017
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
泉 朋子 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (70551505)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | SINR無線通信モデル / 動的ネットワーク / モバイルエージェント / 集合問題 / 基礎アルゴリズム設計 |
Research Abstract |
本研究は,通信電波の強度減衰や干渉,外部環境のノイズを考慮したSINR無線通信モデルに着目し,実際の無線通信に近いモデル上での基礎理論の構築を目標としている.SINRモデルでは電波の干渉の発生により,同時に通信可能な通信ペアは限られる.現在多くの他の研究では,与えられた通信要求に対し時間最適な通信スケジュールを提示することに着目し,多くの研究成果が得られている.このようなスケジュールでは一時的に計算機間の通信が途切れるため,これは上層のプロトコルにとってネットワークの動的変化としてとらえられる. 本年度の研究計画の一つとして,このような不安定な無線通信ネットワーク上での全計算機間での情報共有手法の確立を挙げた.本年度は特にこの研究課題に注力し,動的なネットワーク上での処理に有用とされているモバイルエージェントに着目し,SINRモデル上で生じる無線通信の不安定さと不安定なネットワーク上でのエージェントを用いた情報共有の可解性の関係について研究を行った.エージェントを用いた情報共有は, エージェントの集合問題(ネットワークを巡回する複数のエージェントを1つの計算機に集め, そこで情報共有を行う)を解決することで実現する. 具体的には本研究では,一般的に集合問題の解決が難しいとされているリングネットワークに着目し, 動的リングネットワーク上での集合問題の可解性について次の研究成果を得た.1)決定性アルゴリズムによって集合不可能なネットワーク変化のクラスを定義,2)いくつかの集合可能なネットワーク変化に対する決定性アルゴリズムの提案と評価,3)確率モデルで変化をモデル化したネットワーク上でのアルゴリズムの提案と評価.これらの研究は,本年度国際会議で2回発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,SINRモデルが有するアルゴリズム設計者が望む通信トポロジが維持できない弱さや不安定さが上層のアルゴリズムに与える影響をさらに解明することができた.ただし,解明できたのは特定のネットワークトポロジのクラスに対する集合問題の可解性のみである.SINR上での様々な基礎問題に対する設計手法の確立や、ネットワークの変化を制御する課題については研究準備段階である.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究では,動的なネットワーク上での処理に有用とされているモバイルエージェントに着目し,SINRモデル上でも生じる無線通信の不安定さと不安定なネットワーク上でのエージェントの協調動作の可解性の関係について研究を行った.しかし,解明されたのは特定のネットワークのトポロジクラスのみである.そこで,任意のネットワークトポロジに対する上記問題の考察と,さらに,ネットワーク変化が問題の可解性に影響を与えることから,無線ネットワークの変化を制御する通信手法を提案することを目的とする.
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