2011 Fiscal Year Annual Research Report
可逆計算系と可逆プログラミング言語の設計と実現に関する研究
Project/Area Number |
22700042
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
横山 哲郎 南山大学, 情報理工学部, 准教授 (80456631)
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Keywords | 可逆計算 / 可逆シミュレーション / Janus / 可逆化 |
Research Abstract |
本研究では、可逆計算系における基礎研究を発展させることを目的としている。すなわち、計算過程における可逆性に着目し、その性質を探ることを通して計算原理の探求を行い、基礎的な概念・理論を整備してきた。それに伴い高水準可逆プログラミング言語及び可逆抽象機械の設計及び実装を行うことで、可逆プログラミング言語に有用な諸概念を抽出し、それを扱う方法論を確立することを進めてきた。また、その方法論を一般の非可逆言語の枠組みで活用できるようにするように研究を進めてきている。可逆計算は消費エネルギーと密接な関係があることや量子計算における演算はすべて可逆であることなどが知られており、本研究の成果はこういった関連諸分野における異なる視点からの解釈や応用が期待できる、と考えている。 平成23年度においては、研究実施計画に述べたとおり、可逆計算に関するDagstuhl Seminarに参加して関連分野の研究者と研究交流および研究発表を実施した。また、最も古くから使用されている計算モデルの一つであるフローチャートを用いてプログラミングの可逆性の活用のために基礎理論の整備を進めた。本内容を論文としてまとめており、雑誌に採択されることを期待している。 平成22年度に投稿していた雑誌論文が掲載された。当該論文は、単射関数に対するBennettのクリーンな可逆シミュレーションを、問題固有の知識を用いて最適化する手法を提案したという内容であった。 可逆プログラミング言語の実行環境の整備も進めており、この上での可逆アルゴリズムの試行、性質の確認も行えるようになってきた。これらの研究交流や研究環境整備により、平成24年度の本研究課題の最終年度のとりまとめの方向が見えてきたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画は3年度にわたるものであるが、可逆プログラミング言語の基礎理論の整備、新たな可逆シミュレーションの開発など当初計画通りに進行したと言える。特にわれわれが設計した可逆プログラミング言語の原理に関する論文の引用数が増している。ただし、プログラミングの方法論や可逆アルゴリズムの成果については他の成果の副次的な効果としての発表にとどまっているため、独立してこれらの意義を発表したい。
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Strategy for Future Research Activity |
可逆アルゴリズムについては、可逆シミュレーションや可逆計算に特有のもののみをこれまで対象としてきた。しかし、非可逆計算におけるアルゴリズム研究の蓄積は膨大であるので、それらにも目を向けていきたい。可逆計算の世界だけで閉じずに関連する研究分野との交流をすすめて、より現実に意義のある研究に繋げたい。
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