2011 Fiscal Year Annual Research Report
遅延耐性ネットワークにおける相対的な時刻同期方式の確立
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22700070
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
笹部 昌弘 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (10379109)
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Keywords | DTN / 遅延耐性ネットワーク / 時刻同期 / 平均法 |
Research Abstract |
前年度は,二つの移動端末が遭遇した際に,互いの時刻情報を交換し,それらの平均値にそれぞれの時計を調整するという基本方式を提案し,解析とシミュレーションにより収束速度と収束時に達成される同期精度について明らかにした.その結果,収束速度については初期の時点における端末間の時間のずれ(オフセット)が,同期精度については端末間のクロック速度のずれがそれぞれ大きな影響力を持つことがわかった.収束速度は,システムを新しく立ち上げた際やシステムの構成端末に変化が生じた際にいかに早くシステムが安定した状態に移行できるかに関わる重要な要素であるため,本年度は,まず収束速度の向上を目指した. 基本方式では,二端末が遭遇した際,互いの時刻に対して単純な算術平均を用いているが,このとき,それぞれの端末の持つ時刻情報の確からしさは必ずしも等しいとは限らない.直感的にはより高頻度に遭遇する端末の持つ時刻情報はより確からしいと考えられることから,算術平均の代わりに遭遇率に応じた重み付き平均を導入することで収束速度の向上が期待できる.一方で,遭遇率に対して重みをどのように決定することで収束速度を最大化できるかは自明ではない.そこで本年度は,端末ペア毎の遭遇率が与えられたとした場合,収束速度を最大化する重みの割当方法とそのとき実現される収束速度と時刻同期の精度を解析とシミュレーションにより明らかにした.その結果,遭遇率が端末ペア毎に多様であるほど重み付き平均方式が有効であることがわかった.一方で,最適な重みの割当を端末間で自律分散的に実現するための仕組みについては引き続き検討が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究内容自体は当初の計画に従って進められている.ただし,研究成果である雑誌論文に関しては現在投稿中のため来年度以降になる見込みである.
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Strategy for Future Research Activity |
9.の最後に述べたように,重み付き平均方式における最適重みは解析により導出できているが,それを元に各端末が自律分散的に自身の重みをどのように推定するかについては検討の余地が残っている.ただし,実システムを想定した場合,必ずしも最適重みの正確な推定自身が重要とは限らず,むしろ最適重みからの乖離度と収束速度の低下との関係を明らかにした上で,許容できる誤差を含む重みの推定方法を検討することの方が重要であると考えられる,この場合,最適重みにより実現される収束速度は理論的上限値として見なすことができる.以上の観点を元に,研究を推進する予定である.
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