Research Abstract |
大規模複雑化が進むネットワークを核とする社会の中で,「人」と「ネットワーク」がともに持続的に発展していけるように,ネットワークの発展の方向性を専門家だけが与えるのではなく,利用者からの要求にネットワークが適応的に応えることができる技術(並列進化的P2Pネットワーキング技術)を考案し,計算機シミュレーションにより評価した.本技術は,大規模なP2Pネットワークを複数のサブネットワークに分割し,そのサブネットワークの構造を利用者からの実使用に基づく評価値を利用して進化的に適応させる.このサブネットワークへの分割数を大きくすればするほど,各サブネットワークを管理する特別な1つのノードの負荷を下げることができ,大規模ネットワークへの本技術の可用性が高まる.しかしながら,本技術のシミュレーション評価により,サブネットワークへの分割数を大きくすることで可用性を高めるほど,利用者の要求への適応性が下がるというトレードオフ関係が存在することが分かった.そして,そのようなトレードオフ関係が生じるのは,同時並列的な各サブネットワーク構造の適応のための変化が,ネットワーク構造全体の適応につながらないことに原因があると分かった.より具体的には,変化前の各サブネットワークの構造の善し悪しは,同じく変化前の他のサブネットワーク構造に依存しているため,それらが同時に変化してしまうことでそれらの間の依存関係が崩れてしまうからだと考えられた.この結果より,本技術の可用性と適応性の間のトレードオフ関係をより良く開拓するために,サブネットワーク構造の同時並列的な変化ではなく,各サブネットワークに異なる変化のタイミングを与える方法を設計した.その基礎評価からは,その方法により,より良いトレードオフ関係を得られることを示した.
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