Research Abstract |
現状の技術水準では,自律ロボットを家庭などの実環境へ適用することは極めて困難である.これは,ロボットの持つ限られた知覚能力および計算資源を用いて,複雑な実世界をいかにして表現するかという問題に起因するものである.本研究では,この問題の原因が,物理学に基づいて実世界を客観かつ詳細に表現していることにあると考える。一方,生物に目を向けてみると,生物にとって重要なことは,限られた時間内(実時間)に行動することであり,実世界を少数の主観的かつ汎用な情報で抽象的に表現することでこの問題を解決していると考えられている. 本研究では,従来の物理量を測るセンサに代わる枠組みとして,実世界そのものを情報処理機構として利用することにより,環境から少数の汎用かつ主観的情報を直接計測する枠組みを提案し,ロボットの自律制御へ適用した. 具体的には,身体の力学的性質・電子部品の電磁気学的性質・化学薬品の化学的性質など,実世界の性質を情報処理系として利用し,情報の汎化・抽象化を試みた.したがって.これらを利用できるよう,従来とは異なる設計指針に基づき,新しくロボットを製作し,その有用性を実験により検証した. ロボットの例として,不整地を走行する蛇型ロボットおよび,アメーバー型ロボットを製作し,実際に,力学的性質,電磁気学的性質,化学的性質のそれぞれが,情報処理系として有効に機能することを実験により検証した.また,その成果をレスキューロボットの設計に応用し,災害現場などを想定した不整地を自律的に走行可能な高い走破性と自律性を兼ね備えたロボットの実現に成功した.
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