2011 Fiscal Year Annual Research Report
音素識別システムの要素開発による大脳聴覚野理解の精緻化
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22700212
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
鈴木 裕 山梨大学, 総合分析実験センター, 助教 (40516928)
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Keywords | 母音 / 大脳皮質第一次聴覚野 / 持続反応細胞 |
Research Abstract |
本研究は,脳機能に基づく音素識別システムを構築することで,聴覚感性における脳機能の解明を目指すものである.神経生理学研究及び心理研究により得られた聴覚野に関する知識・実験結果を参考に聴覚システムとして構築するが,当面の対象として音素,まずは母音の識別を扱い,システムとして実用レベルの成果を得ることを目標とする. 平成23年度は,平成22年度の大脳皮質第一次聴覚野(A1)神経細胞の特徴をソフトウェア上で構築したものへ,ヒトの母音(日本語母音/a/,/o/,/u/,/e/,/i/)を入力することで,その出力の違いについて調べた.生理実験においてsustain cellは音声のホルマント周波数分析を行っていることに対応し,母音の弁別にはsustain cellが支配的であることが明らかになっており,音の大きさに対するスパイク反応は,刺激音圧の上昇はスパイク頻度の上昇、刺激音圧の下降はスパイク頻度の下降によって符号化される可能性が示唆されている.それに対して開発したソフトウェアでは,母音ごとのホルマントの違いが,周波数帯域の異なる出力素子のスパイクの頻度の違いとして分類される出力が得られ,生理実験系と矛盾しない結果が得られた.また,これらの出力に対して,相互関係重み付けによって構成される教師なし学習アルゴリズム自己組織化マップ(SOM : Self Organizing Maps)で複数話者の母音を分類させたところ,母音ごとに集合が形成され心理実験及び生理実験系と矛盾しない結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の目標とした,平成22年度構築したシステムを母音に適用することを実施した結果,心理実験及び生理実験系と矛盾しない結果が得られており,おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のシステムはヒトと同等の聴き取りを目指したものであり,健聴者の心理評価を基準としている。しかしながら中等度難聴者,さらには高度難聴者の心理評価では異なった回答がされることを念頭に置くと,本システムとは異なった結果が考えられる。そこで,難聴者の聴き取りも視野に入れ,研究を進める.また,本システムは平成21年度までの生理実験結果である大脳皮質第一次聴覚野のsustain cellの特徴を模擬したものであるが,さらなる新たな生理実験結果が得られ次第,本システムへとインプリメントする予定である.
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