2011 Fiscal Year Annual Research Report
仮現運動刺激にみる物体認識と明るさ・色知覚との関係
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22700214
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
永井 岳大 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40549036)
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Keywords | 感性認知科学 / 心理物理学 / 色知覚 / 物体認知 |
Research Abstract |
本研究課題では、運動知覚の強弱と色弁別特性の関連性という観点から、物体認知が色知覚に与える影響について心理物理学的に検討した。実験刺激としては、運動方向選択性のあるサイズの小さな時空間受容野内での色情報統合の影響を排除し、大きな受容野を持つより高次なメカニズムの影響を検討するため、ステップ幅の大きな仮現運動刺激を用いた。はじめの実験では、仮現運動を作り出すフラッシュ刺激間の時間間隔(SOA)により運動知覚ならびに付随する単一物体知覚の強さを調整し、その強さがフラッシュ刺激間の色弁別感度に与える影響を調べた。結果として、運動知覚が強い場合には、色弁別感度が減少することが明らかとなったことから、刺激運動に沿った色信号の統合メカニズムが存在すると考えられる。また、運動知覚を弱める効果を持つ等輝度背景上で同一実験を行った結果、このSOAによる色弁別感度低下は認められなかった。さらに、同一網膜位置における高時間周波数の色変化フリッカーの検出感度は、その位置に仮現運動軌跡を重ねることにより向上した。いずれの結果も、刺激の運動に沿った色情報の統合が存在するという考えを支持する。次の実験では、知覚的運動方向が一意に定まらない多義仮現運動刺激を用い、同一刺激に対し運動知覚のみが異なる場合の色弁別感度を測定した。その結果、知覚的運動方向は色弁別感度に有意な影響を与えなかった。この結果は物体認知を直接表現するようなメカニズムは色信号統合には関与しないことを示唆する。以上の結果を総括すると、物体運動を検出する受容野サイズの比較的大きなメカニズムによる物体運動検出に伴い、色情報を符号化するメカニズムが色信号を運動軌跡に沿って統合させる働きがあると考えられる。この色信号の統合は同一物体に関する色などの内部情報は不変であるという仮定に基づく視覚系の色信号計算負荷の削減方略と捉えることができる。
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