2011 Fiscal Year Annual Research Report
「睡眠の質」を表す感性語と生体信号との関連性の基礎的検討
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22700217
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊賀崎 伴彦 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (70315282)
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Keywords | 睡眠の質 / 感性語 / 睡眠ポリグラフ / 睡眠段階 / 中途覚醒 / 心拍変動 / 平均心拍間隔 / 非線形解析 |
Research Abstract |
心理学的評価による「睡眠の質」を表す感性語と,生体信号の定量的解析による生理学的評価とを結び付けることを研究の目的として,今年度は,心理学的指標と生理学的指標の関連付けを行うためのベースとなるデータの収集とその解析および評価を行った.「睡眠の質」を変化させる環境因子として,本研究課題では枕に着目した.枕は高さの異なる3種類を準備して,睡眠ポリグラフを計測し,それを7人について行った(1夜目は第1夜効果を考慮したコントロールとして,解析および評価に用いなかった). 心理学的データの収集としては,各実験夜が終了することに,被験者にはリーズ睡眠評価質問票(LSEQ)による睡眠の主観的評価を行ってもらった.睡眠ポリグラフによる計測データからは,睡眠図を作成した.これより,各睡眠段階が現れるまでの時間や,各睡眠段階が出現する合計時間などの睡眠パラメータを得た.その結果,LSEQの「寝つきについて時間がかかったか」の評価点と睡眠図の「睡眠段階2への到達時間」の対数との間に有意な負の相関が,LSEQの「睡眠の質について快か不快か」の評価点と睡眠図の「中途覚醒時間」との間に同じく有意な負の相関が認められた. 並行して,心電図(心拍変動)のみによる「睡眠の質」評価のスクリーニングとして,心拍変動解析(時間領域解析,周波数領域解析,非線形解析から各6指標,計18指標)による睡眠段階推定の検討を行った-その結果,睡眠段階の変動とmeanRR(平均心拍間隔=時間領域解析の1指標)の変動との間に負の相関の傾向が,plpf(非線形解析の1指標)との問に正の相関の傾向がそれぞれ見たれた. LSEQの評価(心理学的指標)と睡眠図のパラメータ(生理学的指標)との間に相関が認められたこと,心拍変動と睡眠段階との間に相関が認められたことから,生体信号による「睡眠の質」の客観的評価への可能性が示唆される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「9.研究実績の概要」で記述したとおり,8名以上の被験者について4種類の枕で各3夜以上のデータ収集を予定していたが,被験者の確保と日程調整が難航し,7名の被験者について3種類の枕で各1夜のデータしか収集できていない.また,心理学的指標と生理学的指標の関連性を検討するのに人工ニューラルネットワークを利用する予定でいたが,統計学的手法による検討にとどまっている.心電図(心拍変動)のみによる「睡眠の質」評価の可能性検討についても,睡眠段階推定の可能性示唆にとどまっている.
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Strategy for Future Research Activity |
早急に被験者を確保し,データ収集に注力する.この際,LSEQ以外の心理学的指標(具体的には「OSA睡眠調査票」).の評価も行ってもらい,心理学的指標に関する拡充を行う.また,LSEQと睡眠図との関係にとどまらず,当初計画していたようにLSEQと生体信号との関係を検討するのに人工ニューラルネットワークを利用することを可及的速やかに試みる。さらに,心電図(心拍変動)と「睡眠の質」との関係についても同様に検討する.計画どおりにデータの収集ができない場合は,一昨年度のスクリーニングで収集したデータと今年度のデータとの間で共通する項目について解析,評価を行う.
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