Research Abstract |
複数人が即興的に身体表現を行ない,他者との関係が深まる際には,自身と他者の身体の境界が開かれ,あたかも一体となる感覚が各人の内面に生じることがある(共振感覚).申請研究では手と手を触れ合わせながら行なう手合わせ表現を題材に,共振感覚の発現を遠隔地間で支援する技術の設計手法の指針を得ることを目的とした.以上を踏まえ,本年度は以下の研究を遂行した. (1)これまでの研究を通じて,表現を共に創りあい,共振感覚が発現するような深いつながりが生じた場合には,合わせた手のひらに先立って双方の身体が共に先行する頻度が高まることを計測にて捉えた.一方で,この実験では手の動きを1自由度に制限した状態で計測を行なっていた.そこで,上記の一般性について確かめるため,身体を拘束せずに,手の動きと上半身の動きを捉える3自由度の計測システムを開発した.計測の結果,表現を共に創りあうことが出来たと報告された試行においては,双方の上半身の動作の相関が高くなることが分かった.また,上半身の動作が先行する様子なども確認された. (2)上述の結果は,手の動き先立つ身体の無意識的な働きが共有されることで,表現を同時的に創出することを実現していることを示唆している.そこで,遠隔で手合わせ表現を支援するために,手の動きに加えて,手の動きに先立って生じる身体の無意識的な動作情報を,双方に伝達する手法を考案した.具体的には,手のひらにおいて生じる力や位置を共有する力・位置の対称型のバイラテラル制御を実装した力触覚デバイスを開発し,さらに身体の先行的動作の情報を風船型装置で手に触覚呈示する装置を開発した.身体表現の熱諌者が被験者となった実験の結果,本手法により,双方が間合いを取りやすくなる可能性が示唆された,以上に加え,小型の力触覚テバイスによって遠隔地間で手合わせ表環を実現するためのハードウエアの開発にも取り組んだ.
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