Research Abstract |
本研究では,非線形力学系(カオス力学系)を計算モデルとして用いた,微分不可能性や等式・不等式制約条件などの種々の制約を有する問題を解くための最適化手法の開発を目的とした研究を実施している。本年度は,(1)多点型離散化時変慣性系モデルを用いた大域的最適化手法の提案と理論的解析,(2)同時摂動勾配近似と多点型カオス最適化手法を用いた最適化手法の提案,(3)パラメータ調整を伴わないカオス最適化手法の提案,(4)カオス最適化手法とラジアル基底ネットワークを用いた最適化手法の提案を行い,1件の学術論文発表と6件の学会発表(うち3件は,査読付き国際会議での発表)を行った。(1)では,離散化時変慣性付き勾配系モデルから発生するカオス軌道を用いた最適化手法について,その特性を理論的に明らかにした上で,その結合モデルによって大域的最適化を実現する手法を提案した。(2)では,勾配の計算が必要であったカオス最適化手法に対して,近似勾配を少ない計算コストで算出できる同時摂動勾配近似法を導入した手法を提案し,主に,数値実験を通してその有効性を検証した。(3)では,パラメータの調整が必要であったカオス最適化手法に対して,勾配ベクトルから方向ベクトルを算出し,探索点の移動量を強制的に決定することで,パラメータの調整なしに優れた探索を実現する手法を提案した。(4)では,目的関数の形状が不明な場合などに有効な手法とされるラジアル基底関数を用いた応答曲面法と,カオス最適化手法を組み合わせた手法を提案した。これらの成果のうち,(1)は,本研究課題に関連した成果であり,(2)と(4)は,目的関数の勾配が計算できない制約を有する問題に対して,(3)は,パラメータの事前調整が難しい制約を有する問題に対して,それぞれ有効なカオス最適化手法を提案しており,本研究課題の目的に大きく寄与する成果であると評価できる。
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