Research Abstract |
本研究では,非線形力学系(カオス力学系)を計算モデルとして用いた,微分不可能性や等式・不等式制約条件などの種々の制約を有する問題を解くための最適化手法の開発を目的とした研究を実施している。本年度は,(1)多点型カオスLagrange関数法の有効性の検証と解析,(2)パラメータ調整を伴わないカオス最適化手法の有効性の検証と解析,(3)準カオス最適化手法を用いた制約条件付き最適化手法の提案,(4)離散同時摂動法と準カオス最適化手法を用いた混合整数最適化手法の提案,(5)初期離散化幅推定を伴うカオス最適化手法の提案を行い,2件の学術論文発表と5件の学会発表(うち2件は,査読付き国際会議での発表)を行った。(1)では,Lagrange関数法とカオス最適化手法を用いた制約条件付き最適化手法について,その特性を理論的に明らかにし,多手法と比較して優れた探索性能を有することを確認した。(2)では,勾配ベクトルから算出した方向ベクトルを利用して,パラメータの調整なしにカオス的探索を実現する手法について,その有効性を詳細に検証した。(3)では,前年度に提案した同時摂動勾配近似法を導入した準カオス最適化手法を制約条件付き最適化問題に応用した手法を提案した。(4)では,準カオス最適化手法を混合整数最適化問題に応用した手法を提案した。(5)では,リアプノフ指数の概念とその計算法を応用して,適切な初期離散化幅を推定する手法を提案した。これらの成果のうち,(1),(3),(4)は複雑な制約条件を有する問題に対して,(3)と(4)は目的関数の勾配が計算できない制約を有する問題に対して,(2)と(5)はパラメータの事前調整が難しい制約を有する問題に対して,それぞれ有効なカオス最適化手法に関する研究成果であり,本研究課題の目的に大きく寄与する成果であると評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した研究計画にしたがって研究が遂行された結果,研究実績の概要でも説明したように,本研究課題の目的に大きく寄与する手法を多数提案し,多手法と比較して優れた探索性能を有することを確認するに至っている。したがって,おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までは,当初予定した研究計画にしたがって研究が進んでいる。来年度も研究計画通りに研究を遂行する。来年度は,研究計画の最終年度にあたるので,これまでの研究成果の取りまとめを行い,本研究課題の目的である「非線形力学系モデルを用いた種々の制約付き最適化手法」について体系的な取りまとめを行う予定である。
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