2011 Fiscal Year Annual Research Report
階層的な確率モデルにおけるベイズ学習の汎用的利用法の確立
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22700230
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 賢二 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (10556062)
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Keywords | 機械学習 / ベイズ学習 / 交換モンテカルロ法 / スペクトル分解 |
Research Abstract |
本研究では,階層的な確率モデルに対して,学習精度の優れたアルゴリズムとしてベイズ学習を考え,ベイズ学習の汎用的な利用を目的とする.具体的に,交換モンテカルロ法によるベイズ学習の近似手法を取り扱い,交換モンテカルロ法の最適設計の構築や,動径基底関数(RBF)ネットワークによるスペクトル分解問題に適用する. 平成23年度の研究では,二硫化モリブデンにおけるX線光電子分光法(XPS)のスペクトルデータについても,S2p軌道を示すピークが二つのピークに分離され,それぞれのピークがS2p1/2軌道S2p3/2軌道のピークと一致することを明らかにした.これらの結果は,与えられたスペクトルデータのみから,特別な分野の専門的な知見なしに同様の知見が導出できたことを表し,その有効性を示している. さらに,交換モンテカルロ法を用いたベイズ推定の最適設計指針についても予備的な結果が得られた.具体的には,メトロポリス法における平均採択率の漸近的な挙動を明らかにした.この結果は,メトロポリス法におけるステップサイズと採択率の関係を示し,さらに,汎化性能を特徴づける学習係数と深く関係があることも示している. また,交換モンテカルロ法を代表とするマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法によるベイズ学習を用いた応用として,マルコフランダム確率場による地震波速度分布から地球内部の流体分布の推定問題への適用を行った.これは,交換モンテカルロ法を用いたベイズ学習の普遍性を示す一例であるとともに,地震のメカニズムを明らかにするといった社会的インパクトも非常に大きな研究である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来の研究課題であるRBFネットワークによるスペクトル分解の問題や,交換モンテカルロ法の最適設計指針の確立について,それぞれ成果をあげるだけでなく,マルコフランダム確率場による地震波速度分布から地球内部の流体分布推定の問題を行う等,予想外の成果を上げることに成功している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では,引き続きRBFネットワークによるXPSスペクトルのスペクトル分解の問題に着手する.従来のXPS測定では,正確な物性情報を抽出するために,測定時間を長くし,放出される光電子数を多くすることで,S/N比のよいスペクトルを測定していた.しかしながら,物性のダイナミクスを知る時間分解XPSでは,質の高いスペクトルを得るためには時間解像度を下げざるを得ない.この周波数解像度と時間解像度のトレードオフのため,どの程度の測定時間で,どれだけの物理量が抽出できるかの設計指針が必要となる.本年度の研究では,ベイズ推定に光電子の離散性をポアソン分布で取り入れ,スペクトル分解と同時にノイズも推定する自動SIN分離のベイズ学習を確立する.
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