2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模データに適用可能なマルコフ確率場の学習アルゴリズムに関する研究
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22700232
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 新一 京都大学, 情報学研究科, 助教 (20379530)
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Keywords | マルコフ確率場 / 因子化仮定 / 平均場近似 / 混合モデル / 変分ベイズ推定 |
Research Abstract |
マルコフ確率場は、時間・空間的な相関関係をもつ様々な現象を単純にモデル化することができるため、認識やセグメンテーションを含む画像処理や自然言語処理など幅広い分野で用いられてきている。しかしながら、離散確率変数を持つマルコフ確率場がループを持つ場合、周辺化計算が困難になるという計算上の問題を抱えており、これが推論・学習を難しくしている。従来、平均場近似を基礎とした近似計算法が用いられてきたが、これは因子化仮定とよばれる独立性に関する制約をおく必要があったり、木構造に対して成り立つ近似計算をそのままループ構造をもつグラフに対して導入されたりしていた。これらの方法では、近似の精度に問題があったり、収束性が保証されない問題が生じる。前年度の研究において、ループを含むモデルでありながら、周辺化計算を行うことのできるモデルを提案することができた。計算機実験の結果、前年度のモデルのままではさらなる近似計算が必要であり、その近似計算を加えることで近似精度が悪化することがわかったため、本年度は、近似計算をしなくて済むよう少数の木構造の混合和による近似計算を提案し、国内会議で発表を行った。この近似計算モデルは、平均場近似モデルのMixture表現と解釈することが可能である。この手法の有用性は、さらに次年度の研究によって検証される計画である。 一方、前年度、マルコフ確率場を医用X線CTに導入し、平均場近似を用いた推論でその有用性を確かめることができた。X線CTでは対象物が投影像を得ている間、動かないことを仮定して再構成を行うが、動いてしまうような場合には再構成像にモーションアーティファクトが生じる。このような問題は、心臓の拍動、呼吸、体動などによって生じる。これらの問題に対応できるように観測モデルを状態空間モデルで表現した新たなX線CTを提案し、その近似推論アルゴリズムを導出した。推論アルゴリズムとして、まず因子化仮定に基づく推論を行ったが、次年度では因子化仮定の独立性仮定を条件付き独立性にゆるめた近似推論アルゴリズムを開発し、有効性を検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、ほぼ想定した計画にあるように平均場近似の制約を隠れ変数を導入することで緩和し、より一般化した構造によるマルコフ確率場の推論アルゴリズムを開発することができた。確率モデルの学習に関しては、Contrastive Divergenceを一般化したDetailed Balance Learningが有用であることが計算機実験で示されており、確率勾配法を用いることで大規模データの学習が可能になるものと予想される。他方、実問題として医用X線CTにおける事前知識にマルコフ確率場を用いたモデルを提案し、平均場近似による推論が有効に働くことがわかった。ただし、画像のように隣接画素間の相関を表すマルコフ確率場は、ループを無数に有したグラフ構造となるため、上記の隠れ変数の導入こよる推論アルゴリズムを取った場合、計算量が膨大になるため近似計算に工夫を行う必要性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
マルコフ確率場の推論法として新たに開発した木構造の混合モデルによる推論アルゴリズムを計算機実験によって実証し、洋雑誌論文での発表を目指す。特に自然画像のモデルのように、格子型に相関関係を有したグラツ構造をもつモデルは、表現すべき相関関係が非常に多くなるが、このような問題に対してスター型の木構造の混合モデルによる近似を適用する。また、実問題として医用X線CTへの適用可能性をより実際に近い問題に対して適用して検証を行う。
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