2011 Fiscal Year Annual Research Report
中立性と動的環境における遺伝アルゴリズムのダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
22700241
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
片田 喜章 摂南大学, 理工学部, 准教授 (30411705)
|
Keywords | ソフトコンピューティング / 進化計算 / 遺伝的アルゴリズム / 動的環境 |
Research Abstract |
分子進化の中立説(neutral theory)は1968年に集団遺伝学者・木村資生により提唱された.これに基づき,表現型に現れない遺伝子メカニズムを生物がうまく利用し進化的な時間スケールで環境変動に適応している可能性が報告されている.進化論的計算の分野においても冗長性に基づく中立性が確認されている.また,動的な環境での最適化は進化論的計算が担うべき重要な適用領域である.しかしながら,中立性の存在はこれまでの理論が想定していた前提が成り立たないことを示唆するため,本研究では中立性と環境変動を同時に扱える新しい理論体系の構築を図っている. ・昨年度に得られた結果をもとに,現在,環境の変動率および突然変異率による,中立ネットワーク上の個体集団の分布に関して確率モデルを構築している.この際に用いる確率モデルはマルコフモデルを採用することからマルコフ連鎖の理解に時間を割いた.遺伝的アルゴリズムの確率モデルにマルコフ連鎖を用いたものが関連論文誌に過去掲載されているため,それをもとに環境変動を扱えるように変更している. ・国際会議European Conference on Artificial Life(ECAL2011)において研究発表を行った(下記研究発表参照).中立性を含む動的環境におけるGAの遺伝子のダイナミクスが計算生物学で観察される現象と等価であることを示した. ・上記の学会発表(国際会議)の論文審査の過程において,動的環境における進化計算研究の中で,本研究の位置づけを明確にするようにとの指摘を受けた.これを受けて昨年度購入した書籍を中心に広くサーベイを行っている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
表現型-適応度写像に冗長性が存在する問題に関しては,計算機実験によるダイナミクスの解析は順調に進んでいる.確率モデルをつくる段階でそのベースとなるマルコフ連鎖モデルの習熟に時間がかかっている.動的環境のモデル化も現在思案中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
・ひき続き,環境の変動率および突然変異率による,中立ネットワーク上の個体集団の分布に関して確率モデルを構築する. ・上記の解析結果をもとに,計算機実験の結果と比較・考察を行う. ・遺伝子型-表現型写像が冗長になるGAの動的な環境におけるダイナミクスを中立性の観点から調べる. ・研究期間最終年度のため,これらの成果を学術雑誌に投稿する.
|