Research Abstract |
(1)本研究の目的,意義と重要性 図書館経営という研究領域では,日米共に研究成果を根拠とした図書館独自の経営理論は確立されていない。そして,これまでの図書館経営では,主として経済効率性の追求に理念をおく営利企業を対象とした経営理論を図書館に適用してきたが,実際はその成果が上がらないばかりか,図書館経営の現場で様々な問題も引き起こしてきた。このことから,本研究の目的は,図書館独自の経営理論の確立を目指し,その基盤を構築することとした。 (2)研究の内容 日本と米国の図書館を対象に訪問調査と資料調査を基礎とした事例分析を行なった。分析の対象は,日本では,国立国会図書館,東京都立図書館,東京大学附属図書館である。また,米国では,ハーバード大学,イェール大学,プリンストン大学,コロンビア大学,ニューヨーク大学,アリゾナ大学,ラトガース大学,マサチューセッツ州立大学・アマースト校,ニューヨーク公共図書館,ボストン公共図書館,プリンストン公共図書館,ピマ郡立公共図書館である。そして,これらの図書館が保有する『年次報告書(Annual Report)』,『経営計画書(Strategic Planning)』,『組織図(Organizational Chart)』,『職務記述書(Position Description)』などを対象に内容分析をした。また,内容分析と併せて,『職員録』などを対象に定量的な分析も行ない,図書館組織の人的資源配分における経年的な特徴を明らかにした。調査対象の期間は,主として経営学で経営理論が隆盛した1960年代から2000年代である。 (3)得られた成果 研究の結果,1)日米の図書館における組織形態と業務の特徴,2)日米の図書館の組織形態と業務の変化の要因,3)特に,変化の要因の中でも情報技術を基礎とした業務効率化とサービス拡充,という観点から図書館経営の特徴が明らかになった。
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