2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代アメリカにおけるテレコミュニケーション規制改革メカニズムに関する実証的研究
Project/Area Number |
22700261
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
清原 聖子 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任講師 (70372422)
|
Keywords | ネットワーク中立性 / 連邦通信委員会 / ティー・パーティー運動 / 政策過程 / アメリカ政治 / 情報通信政策 / 政策研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、新しい政治的主体がアメリカのテレコミュニケーション政策分野の規制緩和に拍車をかけるのか否か、どのような役割を果たしているのかという点を解明することにある。本年度は研究実施計画に従い、ネットワーク中立性を巡る規則制定過程を事例として研究を進めた。ネットワーク中立性問題は、多くの帯域を必要とするリッチ・コンテンツの利用が増加し、帯域が圧迫されるようになると、ネットワーク設備所有事業者が特定のコンテンツ事業者などのネットワーク利用をブロックするか優先順位付けを行うのではないかという危惧が生じ、それを防ぐためにネットワーク設備所有事業者に対し新たな規則を課す必要があるかどうかという議論である。この問題に関して、アメリカでは長い間議会や規制機関である連邦通信委員会(FCC)において政策議論が活発に行われてきたが、2010年12月、FCCで多数決により規則が制定された。よって、本事例研究は非常に時宜に合ったものとなった。 文献資料に加え関係者へのヒアリング調査を進めた結果、ビジネス利益の対立、と捉えられがちなネットワーク中立性を巡る規則制定過程において、2009年秋以降アメリカ政治において台頭した大きな政府批判を強めるティー・パーティー運動が強い関心を示し、政策過程に参入したことが明らかになった。行政の肥大化に強く反対する彼らが政策論争に加わったことにより、もともと自由市場擁護の立場から規則作成に反対してきた保守系団体にとって、草の根運動という大きな味方を得た意味がある。また、FCCにおいて規則は制定されたが、彼らが強力に後押ししたことから、2011年4月、議会評価法に基づきFCCの決定に異議を唱える決議案が下院で可決された。本年度の成果として、本政策分野におけるティー・パーティー運動の展開の意義について論文をまとめており、2011年7月に東京財団より発表予定である。
|