2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代アメリカにおけるテレコミュニケーション規制改革メカニズムに関する実証的研究
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22700261
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
清原 聖子 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 准教授 (70372422)
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Keywords | ネットワーク中立性 / 連邦通信委員会 / ティーパーティ運動 / 政策過程 / アメリカ政治 / 情報通信政策 / 政策研究 |
Research Abstract |
まず、交付申請書に記した研究実施計画に従い、当該研究1年目に行ったネットワーク中立性に関する事例研究の研究成果について、本年度は国内外での学会発表及び論文の刊行を目指した。その結果、6月の日本比較政治学会における口頭発表「現代アメリカのテレコミュニケーション政策ネットワークの変容とイデオロギー対立-ネットワーク中立性の規則制定を事例に」、7月の「Info Com Review」において論文「ネットワーク中立性をめぐるFCCの規則制定過程におけるイデオロギー的対立」の発表に続き、2012年1月に久保文明+東京財団「現代アメリカ」プロジェクト編著による『ティーパーティ運動の研究-アメリカ保守主義の変容』の10章に「ティーパーティ運動とテレコミュニケーション政策-FCCによるネットワーク中立性の規則制定をめぐって」が加えられ刊行された。よって、この点について研究実施計画は十分に達成されたと言える。一方、本年度は新たな事例研究を行うためのヒアリング調査も行う計画となっていた。公刊されている資料収集についてはある程度進んだが、関係者へのヒアリング調査については、「FCCの700MHz周波数帯オークションをめぐる規制」及び「ホワイト・スペース空き周波数帯をめぐる論争」の二つの事例研究について難航した。しかし本研究でこれら3つの事例研究を行う目的は、グーグルなど新しいアクターの政策ネットワークへの参入がもたらす意義を明らかにすることにある。その点について新たなアクターの選挙献金やロビーイングといった政治活動に着目する、という研究実施計画については、グーグルやFTCへのヒアリングも実現したことで、文献資料からだけでは得られない十分な収穫があったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に行った事例研究の成果について、2年目に当初の計画以上に発表する機会に恵まれ、高い評価も得られた。 しかし、2年目に予定していた事例研究については関係者とのヒアリング調査がスムーズに進んでいるとは言えない面もあったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の進め方として、2年目にヒアリングが難航したことを踏まえると事例研究については変更する必要があるかもしれないが、時期を変えるとヒアリングがスムーズに進むこともあるため、もう一度公刊された資料を整理した上で研究計画に沿った事例研究のヒアリング調査を試みたい。また、2年目に行ったヒアリング調査及び資料収集から得られた結果を踏まえ、論文を完成させたい。さらに、本研究の第三の目的は、昨今の情報通信政策の展開を日米比較の観点から検討することであり、本研究課題の事例研究に挙げているネットワーク中立性もホワイト・スペースを含む周波数の有効利用の問題も日米間で共通している。そこで、今年度は、アメリカのテレコム政策ネットワークにおける新たなアクターが通信分野の規制改革において重要な役割を果たしているのか、という点を日本との比較の視座から論じる予定である。
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