2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22700271
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 和宏 京都大学, 生命科学系キャリアパス形成ユニット, 特定研究員 (20546725)
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Keywords | ハト / チンパンンジー / 鳥類 / 霊長類 / 視覚 / 比較認知科学 / ゲシュタルト心理学 / 創発性 |
Research Abstract |
「全体は部分の総和とは異なる」というのは、全体には部分の集まりには含まれない非加算的な性質があることを意味するゲシュタルト心理学の基本概念である。ヒトの知覚様式を考える上で、この全体の非加算性(創発性とも言われる)が非常に重要である。昨年度に続き、標的検出課題を用いてヒトとチンパンジーにおける創発的な形態の知覚を検討した。課題は複数の同じ妨害刺激の中から異なる1つの刺激を標的刺激として検出するものだった。標的検出の成績は、標的刺激と妨害刺激だけが呈示される文脈なし条件、それらに調和する文脈が付加される条件、調和しない文脈が付加される条件の3つの文脈条件で比較された。これらの文脈は、それ自体情報価を持たなかったが、調和する文脈は、標的刺激および妨害刺激と組み合わさることで新たな形態を創発した。調和しない文脈は、標的刺激および妨害刺激が文脈と組み合わさっても新たな形態を創発しなかった。ヒト同様、チンパンジーでも、調和する文脈の付加により標的検出が容易になり、調和しない文脈の付加は標的検出を困難にすることが明らかになった。さらに、どちらの種でも、調和する文脈上に呈示された標的は並列探索によって検出されるのに対し、調和しない文脈上に呈示された標的は逐次探索によって検出されることが明らかになった。これらは、チンパンジーもヒト同様に、部分同士のある組み合わせにより生じる新たな形態を知覚し、そのような創発的特徴を前注意的に処理していることを示唆している。 さらに、同じ課題手続きを用いてハトおよびハシブトガラスでパターン優位性効果の検討をした。用いた課題手続きが同じであるにもかかわらず、ヒトやチンパンジーと違い、ハトやハシブトガラスでは、パターン優位性効果は見られず、文脈付加により弁別成績が低下した。これらの結果、霊長類と鳥類には創発性の知覚に違いがあると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、ハトとヒトの知覚様式による違いを写真を用いた自然カテゴリーの弁別手がかりにも見られることを明らかにすると共に、より厳密な実験操作が可能な幾何学図形を用いた実験系を確立した。2年目は、ヒトとチンパンジーの形態知覚に関する処理様式が似ていることを示す一方、ハトとハシブトガラスを加えた比較に広げ、霊長類と鳥類で形態知覚の処理様式による違いが見られることを明らかにした。当初の研究計画の目的にそった成果は得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ヒト、チンパンジー以外の霊長類を追加した比較研究を行う計画である。また、これまでの研究成果を学術論文として発表するととを目標としている。
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Research Products
(11 results)