2010 Fiscal Year Annual Research Report
物体操作の認知基盤:齧歯目デグーの操作行動をモデルとした研究
Project/Area Number |
22700285
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
時本 楠緒子 独立行政法人理化学研究所, 生物言語研究チーム, 研究員 (10435662)
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Keywords | 定位操作 / 道具使用 / 齧歯類 / デグー |
Research Abstract |
本研究では、齧歯類の一種であるデグー(Octodon degu)を用いて、物体の様々な操作を可能にする認知基盤を実験的に検証することを目的とする。デグーは齧歯類としては初めて、道具使用など複雑な物体操作を行うことが確認された動物である。そこで本研究課題では、定位操作の一種である「入れ子操作」と「熊手を用いた道具使用」を用いてデグーの物体操作能力を定量的に分析し、ヒトを含む霊長類と直接比較することによりヒト認知能力の特性に関して検討していく。本年度は、定位操作の一種である「入れ子操作」と熊手使用訓練のための実験環境の整備を行うとともに、以下の解析を行った。 (1)入れ子操作:デグーの入れ子操作を誘発したと考えられる、自発的な発声制御について訓練で録音された音声を音響解析した。ストレスがない状態で、オペラント訓練によりデグーの発声頻度が増加するかどうかを調べたところ、全ての個体で訓練により発声頻度が増加していた。また4匹中3匹で音声の質的変化が確認された。しかしながらこれらの新奇な音声が定着することはなかった。これらのことから、デグーの日常的な発声は先天的であるが、不完全ながら自発的な発声制御能力も備わっていることが示された。また、デグーの入れ子操作が発声制御訓練期間のみに見られたことから、発声制御と入れ子を可能にする高次認知能力の発現に何らかの関連があることが示唆された。本実験の結果は論文にまとめて投稿した。さらに、これまでに得られた入れ子操作のビデオを解析し、行為の文法的記述を行っている。 (2)道具使用訓練:本年度は訓練のための実験装置の準備を行った。(686字)
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