2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700286
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
泉 明宏 京都大学, 霊長類研究所, 特定准教授 (20346068)
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Keywords | 行動学 / 進化 / 動物 / 霊長類 / 音声 |
Research Abstract |
本研究は、個体間の音声伝達のタイミング操作の効果、および同居個体の発声特性が小型霊長類であるマーモセットの発声に与える影響について実験的に検討し、音声交換における時間的規則性の基盤について明らかにすることを目的としている。マーモセットを同居飼育されている家族個体から隔離し、発声行動を観察した。発声頻度に大きな個体差が見られた一方、多くの個体において、飼育室で見られるのと類似した音声交換の時間パターンを示すことが確認された。 発声のタイミング制御の個体差について検討する一環として、マーモセットの利き手の測定、および個体の気質評価のための行動実験をおこなった。近年の研究により、霊長類において個体の脳の機能的左右差とストレス応答性、そして発声行動の間に関係があることが示されている。例えば、マーモセットには右利きの個体と左利きの個体がほぼ同数見られることが知られているが、左利きのマーモセットと比べて右利きの個体の発声頻度は、他個体が近くに存在することの影響を強く受けることを示している(発声の社会的促進)。利き手については、マーモセットを対象とした先行研究にならい、餌を取る時に左右それぞれの手を用いる頻度を記録した。個体の不安気質の指標として、隔離場面において餌を与え、それを食べるまでの遅延時間、および隔離時の発声行動を記録した。利き手、隔離場面の摂食行動ともに、個体内で安定したデータが記録可能であった。マーモセットの気質を評価する行動指標についてはこれまでほとんど検討されてきておらず、本研究のような簡便な方法は、多数の個体を対象とした研究において有用であると考える。今後、他の行動指標の導入、および質問紙法などによる評価との比較を通して、気質評価法としての信頼性を確認する。そして、これら気質指標や利き手と音声行動の指標の相互関係について明らかにしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに装置の準備・個体の馴致に関しては予定通り進行している。また、一個体の隔離場面での発声の記録、および利き手の調査についても、予定の被験体からの記録を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
マーモセットの発声に対して、事前に設定された遅延時間の後に音声を再生し、再生音のタイミングが発声行動に与える影響について検討する。また、発声のタイミング制御の個体差について検討するため、音声交換実験の被験体となるマーモセットの気質を調べ、発声行動との関係について分析をおこなう。個体の気質については、マカクザルやチンパンジーを対象とした先行研究でおこなわれている、飼育者を対象とした質問紙法を用いて、個体の主観的評価をおこない、因子分析によって気質因子を抽出する。
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