2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700286
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
泉 明宏 京都大学, 霊長類研究所, 特定准教授 (20346068)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 行動学 / 進化 / 動物 / 霊長類 |
Research Abstract |
本研究は、個体間の音声伝達のタイミング操作の効果、および同居個体の発声特性が小型霊長類であるマーモセットの発声に与える影響について実験的に検討し、音声交換における時間的規則性の基盤について明らかにすることを目的としている。これまでに、マーモセットを同居飼育されている家族個体から隔離し、発声行動を観察した。発声頻度に大きな個体差が見られた一方、多くの個体において、飼育室で見られるのと類似した音声交換の時間パターンを示すことが確認された。 マーモセットは発声後の一定時間相手からの返事を待ち、返事が無い場合には新たにもう一度発声するといった、ヒトにおいて観察される発話交替(turn-taking)と類似た規則性があることが明らかになった。このような音声交換について詳細に検討するためには、実験室において自然な音声交換場面を再現した上で、様々な音響パラメタを操作することが有効である。この目的のために、被験体となるマーモセットの発声に応じて、事前に設定された遅延時間の後にあらかじめ録音しておいた「返事」の音声を再生するためのシステムを開発した。今後、開発したシステムを用いて音声交換における時間制御についてより詳細な検討をおこないたい。 また、マーモセットは相手の発声に対して自分の発声タイミングをを調節する程度は個体によって相当異なることが明らかであった。このような個体差が、個体の気質特性にもとづくものであるとの仮説を検証するために、個体の気質因子を抽出するための方法開発をおこなった。飼育者を対象とした質問紙法のデータを因子分析法によって解析したところ、マーモセットにおいて穏やかさと好奇心の2つの因子が抽出された。今後、これらの気質因子と発声のタイミング制御の関係について、統計的な解析をおこないたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マーモセットの個体の気質評価法や利き手の測定法の開発については完了した。また、音声をコンピュータによって自動的に記録し、自動的に返事の音声を再生するシステムの開発を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した音声の鳴き交わし場面を再現するための実験装置を用いて、マーモセットの発声に対して、事前に設定された遅延時間の後に音声を再生し、再生音のタイミングが発声行動に与える影響について検討する。発声のタイミング制御の個体差について検討するため、音声交換実験の被験体となるマーモセットの気質を調べ、発声行動との関係について分析をおこなう。
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