2011 Fiscal Year Annual Research Report
短期的な意識レベルの揺らぎにより向上/低下する脳機能の解明
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22700287
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
小池 耕彦 生理学研究所, 大脳皮質研究系, 特別協力研究員 (30540611)
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Keywords | 脳波-fMRI同時計測 / 覚醒レベル |
Research Abstract |
本年度は,大別して3つの方向で研究を進めた. 第一に,脳波-fMRI同時計測を可能とする実験環境構築を,生理学研究所にておこなった.MRスキャナごとに構造およびノイズ特性が異なる.そのため最適な環境を構築しなければ,脳波のみならずfMRIデータの質も低下し,研究の続行が困難である.この点については,年度前期において,環境構築をほぼ完了することができた. 第二に,照外で脳波計測装置のみを用いて,覚醒度の低下にともなって変動する脳機能の検討をおこなった.覚醒度が低下することによって脳機能が低下することは,直感的によく知られている.しかしどのようなレベルの脳活動が覚醒度により大きな影響を受けるのかについては,明らかでない.本研究では,脳幹レベルの影響を受けておこるOKN(Optokinetic nystamus)という反射的な眼球運動が,覚醒度と相関をしている可能性について検討をおこなった.覚醒度の指標としては脳波を利用して,覚醒に関連していることが知られているα帯域,そして覚醒度の低下に対応づけられることの多いθ帯域のパワースペクトラムの比を用いた.解析の結果,覚醒度の低下に応じて,OKNの生起数が低下することが明らかになった.この結果は,従来から知られている高次認知機能のみならず,動眼反射という比較的に低次な脳機能も,覚醒度のわずかな低下により大きな影響を受けていることを示す. 第三に,脳波-fMRI同時計測で覚醒度の変動にともなって変化する脳活動,特に複数の脳領域間で構成されるネットワークの変化を描出する方法の検討をおこなった.グラフ理論の考え方を応用することで,覚醒度の低下にともなって,主に視覚に関連したネットワークの構造が,大きく変化することが明らかになった.この結果については,英語学術雑誌に投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は,本年度から生理学研究所に異動した.生理学研究所には,前勤務地である(独)情報通信研究機構と同一のMR対応脳波計測装置が購入されていたが,同時計測するのに必要な調整などはMR装置に応じておこなわねばならない.生理研では脳波計測装置の導入から日が浅いため,その設定が不十分であった.申請者が中心となって新たな測定環境を構成したが,作業に数カ月の時間を要した.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の一部を研究環境を構築する作業に取られているため,前出のように研究の進捗はやや遅れている.ただし脳内ネットワークを描出する方法についての検討は予定通り進行しているため,今期は,早期に脳波-fMRI同時記録のデータを取得し,解析をすることが必要である.本年度前期のできるだけ早い時期に,すでにMR外での検討を進めているOKN課題を用いて,脳波-fMRI同時記録のデーダを取得する.それに加えて,より高次の脳機能,たとえば視覚的短期記憶などが覚醒度によってどのような影響を受けるかの検討も並行してすすめ,今期後半にMR内でのデータ取得を目指す.
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