2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子進化的観点に基づいた天然変性タンパク質の解析及び分類法の開発
Project/Area Number |
22700318
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
廣瀬 修一 独立行政法人産業技術総合研究所, 生命情報工学研究センター, 協力研究員 (60549898)
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Keywords | 天然変性タンパク質 / 分子進化 / バイオインフォマティクス / 進化系統樹 |
Research Abstract |
本研究では、生理条件下において特定の立体構造が欠如している天然変性タンパク質に見られる固有の特徴を明らかにすることを目的としている。これまでに、天然変性領域の保存性に関する報告が存在するが、それほど多くの議論がなされていない。そこで本研究では、分子進化的観点に着目し、進化系統樹に基づいて天然変性タンパク質が進化の過程でどのような変遷を経てきたのかを解析した。 まず、NCBIのGenome Projectから代表生物としてゲノムが解読されている生物57種(古細菌12種、真正細菌15種、真核生物30種)を選定し、SSU-rRNA系統解析により進化系統樹を作成した。次に、天然変性領域データベースであるDisProt(http://www.disprot.org/)から天然変性領域割合が100%である65配列を選択し、これを天然変性タンパク質データセットとした。全65配列に対して、代表生物ゲノムからオーソログタンパク質の同定し、複数の天然変性領域予測法(POODLE-L, IUPred, DisProt)を実行することにより天然変性領域を見積もった後、これらの結果を進化系統樹上にプロットした。その後、進化系統樹上でのオーソログタンパク質の分布、および天然変性領域割合の変化の2点から天然変性タンパク質の進化上での変遷を解析した。 解析の結果、多くの天然変性タンパク質のオーソログが、真核生物、特に高等生物にのみに分布していた。また、進化の過程において、天然変性領域割合が大きく変化するタンパク質は存在しなかった。つまり、天然変性タンパク質は、進化の過程において構造を持つタンパク質から変化してきたものではないと推定される。これは新規な知見であり、天然変性タンパク質の理解に貢献するものと考えられる。
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