2011 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ嗅覚記憶依存的に発現する遺伝子の解析による記憶分子機構の解明
Project/Area Number |
22700327
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 智史 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (10463902)
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Keywords | 嗅覚忌避記憶 / 遺伝子変動 / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
結果 本年度の研究により、(1)RNA-seq解析の結果、記憶形成後に有意な変動を示す遺伝子のリストを得た。上昇が認められる遺伝子のなかでも、lanb2遺伝子などのBasement membrane構成因子が特に有意に変動しているという知見を得た。(2)嗅覚記憶中枢であるキノコ体において発現する遺伝子の網羅的リストを得た。(3)homoeobox遺伝子であるprospero遺伝子の発現が脳全体と比較してキノコ体で3倍ほど強いことを明らかにした。(4)prosperoに対するRNAi時期特異的変異解析によりキノコ体で発現するprosperoが短期記憶に必要であるという知見を得た。(5)REM familiyに属するrgk1遺伝子の発現がキノコ体で非常に特異的であることを明らかにした。 意義 本研究により精度の高いキノコ体遺伝子発現情報を得た。これまでに脳全体における発現解析は多くなされているが、キノコ体のみでの発現情報は報告されていない。今回同定した遺伝子lanB2,prospero,rgk1はほ乳類との相同性が高く、ホ乳類記憶中枢での発現(Prosperoホモログprox1はDentate gyrusで特に発現が強い)や神経活動への関与(Rkg1のマウスホモログREM2はvoltage-gated calcium channelを制御する)を示唆する知見が報告されている。特にlanB2のホ乳類ホモログについてはシナプスへの局在やNeurotransmitter channelの局在制御などが報告されており、記憶形成後に1anB2発現が上昇しシナプス活性をmodulateするという新たな分子機構モデルが考えられる。今後、これらの遺伝子について発現解析・変異体解析を進めることにより、高等生物へ一般化できるような記憶形成機構の解明が期待される。
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Research Products
(5 results)