2010 Fiscal Year Annual Research Report
共通病態再現モデル動物を用いた広汎性発達障害の分子病態解明
Project/Area Number |
22700328
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
相田 知海 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50540481)
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Keywords | グルタミン酸輸送体 / グルタミン酸受容体 / GLT1 / GLAST / 自閉症 / 広汎性発達障害 / 強迫性障害 / 興奮性-抑制性アンバランス |
Research Abstract |
自閉症を含む広汎性発達障害は、遺伝的関与が強いものの、多因子疾患であること、ヒト脳の研究上の制約から、優れたモデル動物の確立が病態解明・新規治療法開発に重要である。本研究では、従来の単一遺伝子の変異によるモデルマウスはなく、グルタミン酸輸送体(GLAST,GLT1)の様々な時期・程度での欠損により、広汎性発達障害の共通病態である興奮性-抑制性神経伝達のアンバランス(興奮性が優位になる)を再現するモデル動物を作製、詳細な異常行動の解析とその分子機構同定、広汎性発達障害の病態解明を目的とした。これまでに申請者が作製したモデル動物(GLAST(+/-)&GLT1(+/-))は広汎性発達障害の大半の症状を再現するものの、発症頻度が不安定であるという課題があった。22年度は、より興奮性が優位になるものの、従来、生後2週齢で死亡してしまうGLT1(-/-)マウスを、グルタミン酸受容体NR2B(+/-)との交配により、長期間生存させることに成功した(GLT1(-/-)&NR2B(+/-))。行動解析の結果、このGLT1(-/-)&MR2B(+/-)マウスは全ての個体で社会性行動の欠損という広汎性発達障害様の行動異常を示した。これより安定的に広汎性発達障害を忠実に再現するモデルマウスを作出することに成功した。さらに、生後3週齢でGLT1欠損を誘導されたマウスが、広汎性発達障害と一部症状が重複し関連性が指摘されている、強迫性障害に似た行動異常(頭頚部の脱毛・損傷、毛づくろい行動の増加)を示すことを発見した。これらは興奮性優位の程度・時期により、異なる精神疾患を発症し得ることを示唆している。現在これらのモデルマウスの行動解析を継続しており、終了後脳サンプルを採取し、DNAチップ解析などの分子機構解明を行う。またGLT1欠損をより早期(胎児期)に誘導することで、より優れた広汎性発達障害のモデルマウスの開発を並行して進めており、これらについても同様の解析を進める。
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