2010 Fiscal Year Annual Research Report
マウス嗅覚系におけるCO2センサー細胞の発達と機能の分子機構
Project/Area Number |
22700341
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
高橋 弘雄 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20390685)
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Keywords | 嗅細胞 / CO2 |
Research Abstract |
マウスは嗅覚を用いて大気中のCO_2濃度を感知し、忌避的に行動する。マウス嗅上皮には、CO_2に反応する嗅細胞のサブタイプ(Car2細胞と略称)が存在し、センサーである炭酸脱水酵素Car2と独自のcGMPシグナル経路を持つ。しかしながら、通常の嗅細胞とCar2細胞との間で、センサーやそのシグナル経路も含めたシステムの違いがどのように生み出されるのか?という点は、これまで全く研究されていない。私達は最近、形態形成因子BMP7と転写因子Pax6が、共にCar2細胞特異的に発現することを見出している。 そこで本年度の本研究では、レンチウイルスや遺伝子改変マウスを用いて、これらCar2細胞特異的な遺伝子を通常の嗅細胞に発現させ、その影響を検討した。しかしながら、これらの遺伝子の異所発現により、Car2細胞の細胞分化や神経回路形成過程に顕著な変化は見られず、BMP7やPax6はCar2細胞の発達過程には関与しないと考えられる。現在、これらの遺伝子がCO_2感知などの機能面に寄与する可能性を、Ca2+イメージング法により解析している。また非常に興味深いことに、本年度の私達の研究において、マウスの嗅上皮にはCar2細胞以外にも新規のCO_2応答細胞が複数種類存在することを見出した。この結果は、マウスが複数のCO_2応答細胞の組み合わせにより、CO_2濃度やその原因となる周囲の状況を判断している可能性を示唆している。今後、これらの新規CO_2応答細胞の解析も同時に行い、哺乳類の嗅覚系におけるCO_2感知システムの全体像を明らかにすることを目指す。
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