2011 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質浅層と深層における異なった情報処理様式の解明
Project/Area Number |
22700360
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
竹川 高志 独立行政法人理化学研究所, 脳回路機能理論研究チーム, 研究員 (50415220)
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Keywords | 符号化・復号化 / 情報量解析 / 発火率 / 高次相関 / 神経細胞集団 |
Research Abstract |
近年,大脳皮質の様々な部位で,浅い層では細胞数は多いが発火率が低く,深い層では発火率が高い細胞が多いことが報告されている.この知見から,層ごとの大きな発火率の違いは,根本的な情報表現の違いに起因するとの仮説を立て,それを検証した.具体的には,運動中のラット運動野の同一コラムから深さ方向の異なった複数のマルチユニット記録を行ったデータを用いて,腕の運動情報がどのような発火パターンの特徴により表現されているかを,集団発火時系列に対するカーネル主成分分析を応用した手法により解析した. 共同研究者から,レバーを押して保持し引くという動作を自発的に繰り返すように訓練したラットから記録した多点電極による細胞外記録データの提供を受け,独自に開発した高精度なスパイクソーティング手法を用いて集団発火時系列を推定し,レバー運動と集団発火時系列の関係を解析した.その結果,深い層の集団発火時系列は主に発火率の変動により腕の詳細な運動を表現しており,浅い層では運動の開始を指示するかのような固有のタイミングでのみ発火する細胞が多い傾向があることを発見した.また,深い層では個々の神経細胞の発火率を変動させるタイムスケールがそれぞれ適切にチューニングされていることが重要なのに対して,浅い層では複数の神経細胞の発火活動の高次相関が重要であることも示唆されている.この成果は,大脳皮質の層構造の役割や情報処理様式を理解する上で重要な結果である.
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