2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700363
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
井原 綾 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究センターバイオICTグループ, 主任研究員 (30390694)
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Keywords | 脳 / 言語処理 / 感情 / 脳磁図 |
Research Abstract |
人間は様々な文脈を利用しながら、その場の状況に応じて言語を理解する。その一つが感情的文脈である。円滑なコミュニケーションにとって、感情的情報まで含んだ言語理解は重要であるが、「言語理解の過程で、感情的文脈がどのように利用されて解釈の違いを生じているのか」という問題に着目した研究はほとんどない。本研究は、「感情的文脈を利用した言語理解の脳内機構」の解明を目的とする。感情的特徴を含む音声(プライム)の後に、感情的にニュートラルな言語刺激(ターゲット)を視覚呈示するクロスモダルプライミングパラダイムを用いた脳磁場計測実験を行った。プライムは、人の名前(例、あらいさん)を、「楽しい」(Happy条件)、「平静」(Neutral条件)、「悲しい」(Sad条件)の3種類の感情的プロソディで発せられた音声を用いた。ターゲットには、動詞(例、歩く)または擬似動詞(発音可能であるが単語として存在しない;例、風ぶ)から成る一語疑問文を用いた。その結果、1)ターゲット呈示後300ミリ秒後に右中・下前頭部において、感情的条件(Happy・Sad)とNeutral条件で脳活動差が認められ、2)ターゲット呈示後400ミリ秒後に左下前頭部において、HappyとSad条件で脳活動差が認められた。以上の結果から、感情的文脈を利用した言語理解には両半球の下前頭部の活動が重要であることが明らかになった。また、感情的文脈は右中・下前頭部にて形成・保持され、その情報は、左下前頭部でボトムアップ的意味処理による語彙情報と統合されることにより、感情的文脈情報に応じた言語理解が行われていることが示唆された。さらに、本年度末には、非侵襲的脳刺激手法である経頭蓋直流刺激を用いた実験の準備を行った。
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