2011 Fiscal Year Annual Research Report
Na+/H+交換輸送体によるオートファジーの調節機構
Project/Area Number |
22700407
|
Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
冨樫 和也 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・疾病研究第五部, 流動研究員 (40450613)
|
Keywords | オートファジー / Na+/H+交換輸送体 / 神経変性疾患 |
Research Abstract |
昨年度、細胞内pHのホメオスタシスに寄与するNa+/H+交換輸送体(NHE)を阻害することがオートフナジーによる蛋白質分解系を抑制すること、NHEの過剰発現がオートファジーを活性化することを報告した。ハンチントン病などの神経細胞内に異常蛋白の凝集を伴う神経変性疾患のモデル動物においてオートファジーの活性化が病態を改善することが報告されているが、それらの病態と細胞内pHの関連は報告されていない。そこでpH感受性蛍光蛋白を用いた細胞内pHイメージングの系を確立した。これを用いて凝集体の発現した細胞内pHを測定したところ対照群に比べて有意に酸性化していることが明らかとなった。NHEの過剰発現は細胞内pHをアルカリ化させることからNHEの過剰発現によって凝集体を発現する細胞内の酸性化が中和されることが示唆された。実際、アルツハイマー病の原因となるβアミロイドの凝集性は酸性条件下で顕著に増加するとの報告もあることから、NHEの活性化による細胞内のアルカリ化は異常蛋白の凝集性低減とオートファジーの活性化による異常蛋白の除去という二面性に依っていることが示唆された。更に、脳特異的に発現するNHE5のノックアウト(KO)マウスとハンチントン病モデルマウスを交配して組織学的な解析を行ったところ、NHE5KOマウスでは小脳顆粒細胞において対照群に比して有意に凝集体の数が多く、その直径も大きかった。NHE5に対する抗体を用いた免疫組織化学を試みたが染色に使用できる抗体が得られなかったことから野生型マウスの脳を大脳、小脳、脳幹、嗅球の4つの区分に分けてNHE5のmRNAの発現量を定量的RT-PCR法により比較したところ、小脳は他よりも2倍以上多く発現していることが確認された。以上の結果からNHE5は実際にマウスの生体内において小脳顆粒細胞内に起こる異常蛋白質凝集の抑制に寄与していることが示唆された。
|